水道は、生活に欠かせない公共インフラです。参政党は結党以来、水道事業への民間・外資参入に反対し、再公営化を推進する立場を一貫して主張してきました。2025年の参院選では、宮城県の水道事業をめぐる発言が全国的に注目を集め、水道政策が政治的な争点として浮上しました。
この記事では、参政党が掲げる水道政策の内容と、その背景にある法制度・論点を整理します。水道法改正で導入されたコンセッション方式とはどういう仕組みか、参政党はどのような根拠で反対しているのか、宮城県との論争では何が争点になったのかを、公的資料をもとに確認します。
水道政策に関心がある方、参政党の主張の根拠を知りたい方に向けて、制度の構造から解説します。
参政党が掲げる水道政策の基本的な立場
参政党の水道政策は、2025年参院選の公約にも明記されています。党の主張と、その根拠となる制度的背景を整理します。
再公営化という主張の内容
参政党の2025年参院選公約には、「郵政、水道、NTT、鉄道等の行き過ぎた民営化を見直し、再公営化を進める」という方針が掲げられています。水道については、民間・外資の参入を制限し、自治体が運営主体となる公営の形態を維持・回復することを目指す立場です。
ただし、厳密には日本の水道法上、水道事業を完全に民間企業に売却する「完全民営化」は現行制度では認められていません。参政党が問題視しているのは、施設の所有権は自治体に残したまま、運営権のみを民間に委ねる「コンセッション方式」の拡大です。
再公営化という表現は、すでにコンセッション方式が導入された事業を公営運営に戻すという意味で使われています。
コンセッション方式への反対論拠
参政党の神谷宗幣代表は2024年、「日本の水道事業の民営化・外資開放への懸念に関する質問主意書」を参議院に提出しています。参議院の公式記録によれば、質問の要旨は、コンセッション方式の導入によって水道料金の急激な上昇、水質の低下、災害時の供給継続性の低下などのリスクが生じる可能性について政府の見解を問うものでした。
政府の答弁書(内閣参質二一三第一一〇号)では、デメリットとして水道料金の上昇・水質低下・給水体制の脆弱化・災害時の継続性の懸念を認めつつ、法的枠組みで対応するとしています。参政党はこの答弁を受け、海外の民営化失敗事例(イギリスのテムズ・ウォーター問題等)を挙げて再質問主意書も提出しました。
水の安全保障という観点
参政党が水道政策で強調するもう一つの論点が、安全保障の観点です。水は食料・エネルギーと並ぶ国家の安全保障上の重要資源であり、外国資本が水道運営に参入することは経済安全保障上のリスクになりうるという主張です。
参議院公式サイトに掲載の質問主意書では、日本水道協会が2009年に公表した報告書を引用し、「水は代替物がなく、国家の安全保障にとって極めて重要」という整理を示しています。政府はこの安全保障上のリスクについて「特段検討を行っていない」と答弁しており、参政党はその点を問題視しました。
1. コンセッション方式(運営権の民間委託)の拡大に反対
2. 外資の水道事業参入は経済安全保障上のリスクと主張
3. すでに導入された事業の再公営化を推進する立場
- 参政党は「完全民営化」ではなくコンセッション方式の拡大を問題視している
- 質問主意書を通じて政府の安全保障上の検討不足を指摘している
- 公約として「行き過ぎた民営化の見直しと再公営化」を掲げている
2018年改正水道法とコンセッション方式の仕組み
参政党の主張を理解するうえで、コンセッション方式がどのような制度なのかを確認しておくことが大切です。2018年の水道法改正によって導入が可能となったこの方式は、水道民営化論争の核心にある制度です。
コンセッション方式とは何か
コンセッション方式(公共施設等運営権制度)とは、自治体が水道施設の所有権を保持したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する制度です。2011年のPFI法改正で制度化され、2018年の水道法改正でこの方式を水道事業に適用しやすくする法整備が行われました。
施設・設備の所有は自治体に残るため「完全民営化」ではありません。しかし、運営の実務・維持管理・収益化は民間事業者が担います。水道料金の改定は自治体の議会承認が必要な形態もあれば、契約内容によって民間側に一定の裁量が生じる形態もあり、契約の設計によって自治体の関与の度合いが異なります。
導入の背景と目的
2018年改正の背景には、人口減少による水道料金収入の減少、老朽化した水道管・浄水場の更新費用増大、水道技術者の人材不足という3つの課題があります。国土交通省などの資料では、水道施設の老朽化が進む一方で維持更新の財源が不足しており、民間の資金・経営能力・技術力を活用する必要性が指摘されています。
コンセッション方式は、あくまで選択肢の一つとして自治体が判断する仕組みです。実際に導入するかどうかは各自治体が主体的に決定します。政府は「PPP/PFI推進アクションプラン」の中で、水道・工業用水・下水道を合わせて225件のコンセッション方式移行を目標として掲げています。
世界における民営化と再公営化の動向
参政党が質問主意書で言及した「世界での再公営化の動き」については、公共サービスリサーチ連合が世界37カ国235の水道事業で再公営化が行われたとする調査結果を示しています。フランスのパリ市は2010年代初頭に再公営化した例として知られており、参政党の主張ではこの流れを根拠の一つとして挙げています。
ただし、再公営化の件数や理由については見方が分かれており、「世界的に再公営化が進んでいる」という表現に対しては、データの解釈に異論もあります。最新の動向については、各国の政府発表や国際機関の報告を参照するとよいでしょう。
| 区分 | 所有権 | 運営権 | 料金決定 |
|---|---|---|---|
| 公営(従来型) | 自治体 | 自治体 | 議会承認 |
| コンセッション方式 | 自治体 | 民間事業者 | 契約・議会による |
| 完全民営化(日本では不可) | 民間 | 民間 | 民間裁量 |
- コンセッション方式は「完全民営化」ではなく、所有権は自治体が保持する
- 2018年の水道法改正で自治体が導入しやすくなった
- 導入するかどうかは各自治体が判断する選択肢の一つ
宮城県との論争で浮上した争点
2025年の参院選期間中、参政党の神谷代表による街頭演説が宮城県との公開的な論争に発展しました。この件は「みやぎ型管理運営方式」という具体的な事例をめぐる論点の整理として参考になります。
神谷代表の発言と宮城県の反論
2025年7月13日、神谷代表は仙台市内の街頭演説で「宮城県は水道事業を民営化し、外資に売った」という趣旨の発言をしました。これに対し宮城県は7月15日、発言が事実と異なるとして抗議文を提出し、訂正と謝罪を求めました。
宮城県の公式サイト(みやぎ型管理運営方式)の説明によれば、同県の取り組みは「完全民営化とは決定的に異なる官民連携事業」であり、施設の所有権は県が保持し、水道料金の改定には県議会の議決が必要な仕組みとなっています。また、運営を担う会社「みずむすびマネジメントみやぎ」の代表企業(議決権51%保有)は国内企業のメタウォーターであり、「外資に売った」という表現は事実に反するとしています。
参政党側の見解と反論
参政党は謝罪を拒否し、7月18日に見解を公表しました。参政党の公式サイトに掲載された見解によれば、施設の現場運転管理を担う「みずむすびサービスみやぎ」という別会社では、フランス系のヴェオリア・ジェネッツが議決権の51%を保有しており、この事実を根拠に「外資が事実上支配している」という主張の合理性を主張しています。
宮城県側は、みずむすびサービスみやぎについても、株主であるメタウォーターが33.5%を保有して重要事項への拒否権を有するため、外資が一方的に決定できる構造ではないと反論しています。また、経営審査委員会による第三者監視の仕組みが設けられていることも説明しています。
論争から見えた論点の整理
この論争は、「民営化」「外資参入」という表現の定義・解釈の違いが中心にあります。コンセッション方式を「民営化」と呼ぶかどうか、外資系企業が一部出資する会社を「外資に売った」と言えるかどうか、という言葉の使い方の問題と、制度上のリスク評価の問題が混在していました。
・「民営化」の定義:コンセッション方式は完全民営化ではないが、参政党は広義の民営化と捉える
・「外資参入」の評価:現場管理会社では外資が議決権過半数を持つが、拒否権・監督の仕組みも存在
・責任の所在:施設所有・料金決定権・最終責任は宮城県にある
- 宮城県は「官民連携事業」であり外資への売却ではないと主張
- 参政党は現場管理会社への外資の議決権保有を問題視する立場
- 両者の主張の違いは、制度の解釈・用語の定義の問題に起因する部分が大きい
- みやぎ型管理運営方式の詳細は宮城県公式サイトのQ&Aページで確認できます
水道事業の現状と課題
参政党の水道政策の背景には、日本の水道が直面している現実的な課題があります。どのような課題があり、どのような政策論争が行われているのかを整理します。
老朽化と人口減少という二つの課題
厚生労働省の資料(現在は国土交通省が所管)によれば、日本の水道普及率は約98%に達しており、世界的にも高い水質を維持してきました。しかし現在、二つの大きな構造的課題に直面しています。
一つは施設の老朽化です。高度成長期に整備された水道管や浄水場の更新時期が集中しており、更新費用が自治体の財政を圧迫しています。もう一つは人口減少による料金収入の減少です。節水技術の向上も加わり、水道事業の収支は悪化傾向にあります。水道技術者の人材不足も深刻で、職員数は30年前と比較して大幅に減少しているとされています。
公営維持のコストと民間活用の議論
これらの課題に対し、大きく二つの方向性が議論されています。一つは自治体間の広域連携によるスケールメリットの確保で、複数の自治体が水道事業を統合・共同化することでコストを分散させる方法です。もう一つがコンセッション方式による民間活用です。
宮城県の「みやぎ型管理運営方式」は、20年間の長期契約と上下水道・工業用水の一体契約によって、スケールメリットとコスト削減を図る設計となっています。宮城県の公式資料では、この方式によって一定のコスト削減効果が見込まれるとしていますが、長期的な実績はこれから積み上がる段階です。
政党ごとのスタンスの違い
水道政策については、各政党のスタンスに違いがあります。参政党・れいわ新選組は水道の民営化(コンセッション含む)に明確に反対しており、公営維持・再公営化を主張しています。一方、自民党・公明党・日本維新の会は2018年の改正水道法に賛成しており、コンセッション方式を選択肢として認める立場をとっています。
立憲民主党・国民民主党は2018年の改正水道法に反対しましたが、もともと民主党政権時代にPFI法改正でコンセッション制度を制度化した経緯があります。各党の詳細な政策については、最新の公約資料や国会の会議録を参照するとよいでしょう。
| 政党 | 2018年水道法改正 | コンセッション方式への姿勢 |
|---|---|---|
| 自民党 | 賛成 | 選択肢として容認 |
| 公明党 | 賛成 | 選択肢として容認 |
| 参政党 | 結党前 | 反対・再公営化を主張 |
| れいわ新選組 | 結党前 | 反対・公営維持を主張 |
| 立憲民主党 | 反対 | 慎重・反対傾向 |
- コンセッション方式への賛否は政党によって立場が異なる
- 参政党とれいわ新選組は2025年参院選でも水道の民営化反対を明記した
- 各党の最新スタンスは、参議院・衆議院の公式サイトの会議録でも確認できます
参政党の水道政策を読み解く視点
参政党の水道政策は、単に民営化への反対という表面的な立場にとどまらず、複数の観点が組み合わさっています。政策の全体像を理解するためのポイントを整理します。
安全保障・食と健康の政策との連動
参政党の政策体系では、水道は「食と健康、環境保全」という重点政策領域の一部として位置づけられています。食の安全、農業保護、自然環境の維持といった政策と連動して、水の公共性・国家管理の必要性が強調されています。
これは、参政党の基本的な政策方向性であるグローバリズムへの懐疑・国内資源の国家管理強化という姿勢と一致しています。水道の公営維持は、外資参入の制限という文脈で経済安全保障政策の一部とも重なります。
国会活動における取り組み
参政党は2022年の参院選で初めて国政政党となり、2024年の衆院選で議席を拡大しました。参議院の公式サイトによれば、神谷代表は水道政策について質問主意書を2回(2024年)提出しており、国会の場で政府の見解を引き出す活動を行っています。
2025年の参院選では、選挙区と比例区を合わせて14議席を獲得しました。水道問題は宮城県の選挙でも争点になり、党として支援した候補者(和田政宗氏)との政策覚書に「水道の民営化見直し・再公営化の推進」が盛り込まれています。
今後の注目ポイント
政府は「PPP/PFIアクションプラン」でコンセッション方式の普及目標を定めており、今後も各地でコンセッション方式の導入検討が続く見通しです。参政党は議席を持つ国政政党として、今後も水道政策について国会質問・政策提言を続ける立場にあります。
各地の水道事業の具体的な動向については、各都道府県・市町村の公式サイトや、厚生労働省(水道行政は現在国土交通省に移管)の最新資料を参照するとよいでしょう。また、参議院の公式サイトでは、質問主意書と政府答弁書を全文確認できます。
・参政党の政策:参政党公式サイト(sanseito.jp)の政策・公約ページ
・国会質問主意書:参議院公式サイト(sangiin.go.jp)の質問主意書検索
・みやぎ型の詳細:宮城県公式サイト「みやぎ型管理運営方式」ページ
- 参政党の水道政策は安全保障・食の安全・グローバリズム懐疑という政策観と連動している
- 質問主意書2件を通じて国会の場で政府の見解を追及している
- 政府のコンセッション普及方針が続く中、今後も国会での議論が続く見通し
まとめ
参政党の水道政策は、コンセッション方式によるインフラの民間・外資参入に反対し、水道を公営で維持・再公営化することを軸にしています。その背景には、安全保障上のリスク、海外での民営化失敗事例、水道老朽化・人口減少という現実の課題が組み合わさっています。
政策の詳細を知りたい場合は、参院公式サイトで神谷代表が提出した質問主意書(第213回国会・質問第110号)と政府答弁書を参照することで、両者の主張を一次資料で確認できます。
水道は私たちの日常に直結する公共インフラです。各政党の立場の違いや制度の仕組みを把握したうえで、制度の行方を見ていきましょう。
本記事の内容は執筆時点の公的情報をもとに整理したものです。制度・法令・人事等は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。

