税収過去最高なのに国民負担率は半分近い|その理由に迫る

税収過去最高なのに国民負担率は半分近い現状について、男性がデスクで経済データを確認しながら考察している様子を表すイメージ画像 政治制度と法律の仕組み

令和8年度の税収は83兆7350億円となり、7年連続で過去最高を更新する見通しです。所得税、法人税、消費税のいずれも前年度の当初予算を上回る水準で見込まれています。

その一方で国民負担率は45.7%にとどまり、税金や社会保険料の負担が国民所得の半分に迫っていると感じる方も多いでしょう。財務省の公表資料では、令和8年度の国民負担率は前年度から2年連続で低下する見通しが示されており、税収の記録更新とは逆方向の動きになっています。

税収の記録更新と国民負担率の水準は、それぞれ分母や算出方法が異なる仕組みで動く数字です。片方だけを見て負担が増えている、あるいは減っていると判断すると、実際の状況とずれてしまうこともあります。以下では、両者の関係と令和8年度予算の内訳を、財務省など公的資料の数字をもとに確認していきます。

税収過去最高でも国民負担率が半分に迫る理由

この章では、税収が過去最高を記録する一方で国民負担率が半分近い水準にあるとされる背景を整理します。二つの数字がどのような関係で動いているのか、まず全体像を確認しておくと、後の章の数字も理解しやすくなります。

税収と国民負担率は別の指標

税収は、国が1年間に集めた税金の総額を指す数字です。所得税や法人税、消費税など、国税の合計が主な内容になります。

一方、国民負担率は、税金と社会保険料の合計額が国民所得に対してどの程度の割合を占めるかを示す指標です。財務省の公表資料では、租税負担率と社会保障負担率を合算して算出しています。

この二つは対象とする範囲が異なるため、税収が増えても国民負担率が必ず上がるとは限りません。国民所得そのものが伸びている場合は、税収が増えても比率としては横ばい、あるいは低下することがあります。

ニュースの見出しだけを追うと、両方とも「過去最高」や「過去最低」のように、断片的な情報として受け取られやすい点にも注意が必要です。

令和8年度の税収は83.7兆円で7年連続の過去最高

令和8年度の一般会計税収は、83兆7350億円と見込まれています。前年度の当初予算と比べて7.6%の増加であり、7年連続で過去最高を更新する見通しです。

内訳を見ると、所得税が25兆3250億円、法人税が20兆6960億円、消費税(国税分)が26兆6880億円となっています。物価上昇や企業業績の改善が、増収の主な背景です。

ただし、税収が過去最高になったことと、国民一人ひとりの負担感が強まっているかどうかは、別の問題として考える必要があります。税収額は国全体の合計値であり、個々の家計や企業の負担額を直接示すものではありません。

国民負担率は45.7%で2年連続の低下

財務省が令和8年3月に公表した資料では、令和8年度の国民負担率は45.7%となる見通しが示されています。令和6年度の実績46.7%、令和7年度の実績見込み46.1%と比べると、2年連続の低下です。

内訳は、租税負担率が28.0%(国税18.1%、地方税9.9%)、社会保障負担率が17.6%となっています。税収そのものは増えていても、国民所得の伸びがそれを上回ることで、負担率としては下がる場合があります。

財政赤字の分を加えた潜在的国民負担率は、令和8年度に48.4%となる見通しです。将来世代の負担も含めた場合には、5割に近い水準が続いています。令和6年度の潜在的国民負担率は50.3%であったため、この指標も緩やかに低下する傾向にあります。

数字が矛盾して見える理由

税収が過去最高であることと、国民負担率が下がる見通しであることは、一見すると矛盾しているように感じられます。

ただし、国民負担率は税収の絶対額ではなく、国民所得に対する比率で計算される数字です。賃上げや企業収益の改善によって国民所得の総額が増えれば、税収が増えても比率としては上がりにくくなります。

この点を踏まえずに税収額だけを見ると、負担が急激に重くなっているという誤解につながりやすい点には注意が必要です。実際の負担感を確認する際は、税収の総額と国民負担率の両方をあわせて見ることが大切です。

年度国民負担率区分
令和6年度46.7%実績
令和7年度46.1%実績見込み
令和8年度45.7%見通し

Q1:税収が増えると国民負担率も必ず上がりますか。

A1:上がるとは限りません。国民所得の伸びが税収の伸びを上回れば、負担率としては下がることがあります。

Q2:潜在的国民負担率とは何ですか。

A2:国民負担率に財政赤字の分を加えた指標です。将来世代が負担する可能性のある分も含めて示しています。

  • 税収と国民負担率は計算の対象が異なる指標です。
  • 令和8年度の税収は83兆7350億円で7年連続の過去最高です。
  • 令和8年度の国民負担率は45.7%で2年連続の低下です。
  • 国民所得の伸びが負担率を押し下げる要因になります。

国民負担率の仕組みと計算方法

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ここでは、国民負担率がどのような計算式で求められているか、租税負担率や社会保障負担率との関係を整理します。用語の意味を押さえておくと、ニュースで見る数字の意味が分かりやすくなります。

国民負担率の定義

国民負担率は、租税負担率と社会保障負担率を合計した指標です。国民所得に対して、税金と社会保険料がどの程度を占めているかを表します。

財務省は毎年、実績と見込み、翌年度の見通しを公表しています。令和8年度は、令和8年3月5日に見通しが公表されました。過去の年度の実績は決算が確定した後にあらためて公表されるため、見込みや見通しの段階では、数値が後から修正される場合もあります。

この指標は日本独自の集計方法によるもので、諸外国では同じ形の指標が公式に使われているとは限らない点には注意が必要です。国際比較を行う際は、財務省が別途公表しているOECD加盟国との比較資料が参考になります。

租税負担率と社会保障負担率の内訳

租税負担率は、国税と地方税を合わせた税金の負担割合です。令和8年度は28.0%で、内訳は国税18.1%、地方税9.9%となっています。

社会保障負担率は、年金や医療、介護などの社会保険料の負担割合です。令和8年度は17.6%と見込まれています。

この二つを合計した数字が国民負担率であり、片方だけを見ても全体像はつかみにくい点が特徴です。租税負担率と社会保障負担率は、それぞれ別の要因で増減するため、どちらが変化の主因かを分けて確認すると理解しやすくなります。

潜在的国民負担率との違い

潜在的国民負担率は、国民負担率に財政赤字の分を加えた指標です。財政赤字は将来の税や社会保険料で穴埋めされる可能性があるため、将来世代の潜在的な負担として加算されています。

令和8年度の潜在的国民負担率は48.4%となる見通しです。現在の国民負担率45.7%よりも高い水準になっています。

財務省は、国民負担率の高低について良い悪いといった評価はしていないとしており、給付と負担のバランスを考えるための材料として公表している立場です。

国民所得を基準にする理由

国民負担率は、国内総生産(GDP)ではなく、国民所得を分母として計算されています。国民所得は、GDPから固定資本減耗や間接税の影響を調整した数字です。

分母に国民所得を使うことで、実際に家計や企業が受け取る所得に対する負担の重さを、より実態に近い形で示すことができます。

この計算方法の違いを知っておくと、対GDP比で示された別の負担率の数字と比較する際にも、混同しにくくなります。令和8年度の国民負担率対GDP比は32.7%と示されており、国民所得ベースの45.7%とは水準が異なる点にも注意が必要です。

国民負担率=租税負担率+社会保障負担率
租税負担率=国税+地方税の負担割合
社会保障負担率=年金・医療・介護などの保険料負担割合
潜在的国民負担率=国民負担率+財政赤字の負担分

自分の負担感を大まかに把握したい場合は、給与明細に記載されている所得税、住民税、社会保険料の合計額を、額面の給与で割ってみる方法があります。国民負担率とは分母が異なりますが、手取りと負担の関係を確認する目安として役立ちます。

  • 国民負担率=租税負担率+社会保障負担率です。
  • 令和8年度の租税負担率は28.0%、社会保障負担率は17.6%です。
  • 潜在的国民負担率は財政赤字の分を加えた指標です。
  • 分母には国民所得が使われています。

令和8年度予算に見る税収の内訳

ここでは、令和8年度予算の税収内訳と歳出全体の規模を確認します。税収がどの税目で伸びているか、歳出とのバランスがどうなっているかを見ていきます。

所得税・法人税・消費税の伸び

令和8年度の税収83兆7350億円のうち、所得税は25兆3250億円で前年度当初予算比11.7%の増加が見込まれています。

法人税は20兆6960億円で7.5%増、消費税(国税分)は26兆6880億円で7.1%増となる見通しです。想定通りに推移すれば、法人税と消費税は過去最高を更新します。

所得税の伸びが特に大きいのは、賃上げによる名目所得の増加が反映されているためです。あわせて閣議決定された令和8年度税制改正の大綱では、いわゆる年収の壁の引き上げに伴う減収と、賃上げ促進税制の見直しによる増収が見込まれています。

税収増加の背景

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税収の増加は、物価上昇や企業業績の改善が主な背景です。名目の所得や利益が増えれば、同じ税率でも税収額は増えます。

一方で、名目所得が増えても物価上昇分を差し引いた実質所得が伸びていない場合、税負担だけが重くなったと感じやすくなります。この現象はブラケット・クリープと呼ばれています。

税収の増加額を見る際は、名目の伸びなのか、実質的な所得の伸びを伴っているのかを区別しておくと、数字の意味を捉えやすくなります。当初予算で見積もった税収よりも実際の税収が多くなる「税収上振れ」が近年続いている点も、増収の一因として指摘されています。

歳出も過去最大を更新

令和8年度の一般会計歳出総額は122兆3092億円で、2年連続で過去最大を更新しています。社会保障関係費、防衛関係費、国債費がいずれも増加している点が特徴です。

社会保障関係費は39.1兆円で、高齢化に伴う医療・介護・年金の給付増加が主な要因です。国債費は31.3兆円まで拡大しており、想定金利の引き上げが影響しています。

歳出の増加ペースが税収の増加ペースを上回れば、国債への依存度が高まる可能性がある点には注意が必要です。防衛関係費も8兆8093億円まで拡大しており、防衛力整備計画に基づく増額が続いています。

公債依存度の変化

令和8年度予算の新規国債発行額は29兆5840億円で、公債依存度は24.2%となる見通しです。前年度からは改善しているものの、歳出のおよそ4分の1を国債に頼る構造は続いています。

一般会計の基礎的財政収支は、令和8年度予算で平成10年度以来28年ぶりの黒字となる見通しが示されています。

ただし、国債残高の水準や利払い費の増加については、引き続き財政運営上の課題として指摘されています。想定金利は3.0%へと引き上げられており、金利上昇が今後の国債費を押し上げる可能性も指摘されています。

税目令和8年度見込み前年度当初予算比
所得税25兆3250億円11.7%増
法人税20兆6960億円7.5%増
消費税(国税分)26兆6880億円7.1%増

税制改正の内容を確認したい場合は、財務省の税制改正資料や国税庁の発表資料を毎年12月から翌年3月ごろに確認する方法があります。所得税の控除額や税率の変更点は、この時期にまとまって公表されます。

  • 令和8年度の税収内訳は所得税・法人税・消費税がいずれも増加です。
  • 税収増加の背景には物価上昇や企業業績の改善があります。
  • 歳出総額も122兆3092億円と過去最大を更新しています。
  • 公債依存度は24.2%まで改善する見通しです。

五公五民という表現の背景と受け止め方

ここでは、国民負担率が五公五民になぞらえられるようになった経緯と、その表現をどう受け止めればよいかを整理します。江戸時代の年貢との違いも確認します。

五公五民の意味と江戸時代の年貢

五公五民とは、収穫の5割を年貢として納め、残り5割を農民の取り分とする、江戸時代の年貢率のひとつです。天領はおおむね3割から4割台、大名領ではさらに高い率が設定されていた地域もあったとされています。

国民負担率が5割に近づいた際、この年貢率になぞらえて令和の五公五民と呼ばれるようになりました。

ただし、江戸時代の年貢は収穫物に対する現物負担であり、現代の税や社会保険料とは、対象となる所得の範囲や受けられる公的サービスの内容が大きく異なる点には注意が必要です。江戸時代の史料をもとにした研究では、実際の実効負担率は地域や時代によって幅があったとも指摘されています。

国民負担率が話題になった経緯

国民負担率が大きく取り上げられるようになったのは、令和3年度決算で48.1%と過去最高を記録したことがきっかけのひとつです。翌令和4年度も47.5%と、5割に近い水準が続きました。

国民負担率は昭和45年度の公表開始時点では24.3%でした。その後、消費税率の引き上げや高齢化に伴う社会保障負担の増加を背景に、上昇傾向が続いています。

令和8年度は45.7%の見通しであり、直近のピークからはやや低下していますが、依然として40%台後半に近い高い水準です。国民負担率が40%を超えたのは平成25年度であり、その後は継続して40%台が続いています。

財務省の見解

財務省の担当者は、国民負担率の高低について良い悪いといった評価はしていないと説明しています。給付と負担のバランスを考えるための材料として、この指標を公表しているという立場です。

社会保障負担率の上昇は、年金や医療、介護といった公的サービスの受益とも表裏一体の関係にあります。負担だけでなく、受けている給付の内容も合わせて確認することが大切です。少子高齢化が進む中で、現役世代の社会保障負担率をどう抑えるかは、令和8年度予算でも論点のひとつとなっています。

諸外国との比較で見える位置づけ

財務省の国際比較資料によると、OECD加盟国のうち比較可能な国々の中で、日本の国民負担率は中位からやや低い水準にあります。最も高いルクセンブルクは9割近くに達する一方、最も低いメキシコは2割台です。日本より順位が高い国には、フランスやフィンランドなど、社会保障が手厚いことで知られる国が多く含まれています。

北欧諸国など社会保障が手厚い国では、国民負担率が高い傾向があります。数字の高さだけでなく、受けられる社会保障の内容と合わせて比較すると、位置づけを把握しやすくなります。

令和8年度の日本の水準は、諸外国と比べて突出して高いわけではないものの、上昇傾向が続いてきた点は事実として押さえておくとよいでしょう。

五公五民=収穫の5割を年貢として納める江戸時代の年貢率
令和3年度決算:国民負担率48.1%(過去最高)
令和8年度見通し:国民負担率45.7%
江戸時代の年貢と現代の税・社会保険料は対象範囲が異なる

Q1:国民負担率が5割に近いというのは正確ですか。

A1:令和8年度の見通しは45.7%で、5割そのものではありません。財政赤字を加えた潜在的国民負担率は48.4%です。

Q2:国民負担率が下がれば負担は軽くなりますか。

A2:比率としては下がりますが、税収額自体は過去最高が続いています。数字の種類ごとに意味を確認することが大切です。

  • 五公五民は江戸時代の年貢率の一つです。
  • 国民負担率が5割に近づいたことから、この表現が使われるようになりました。
  • 財務省は負担率の高低を評価する立場は取っていません。
  • 諸外国と比べると、日本の水準は中位からやや低めです。

まとめ

令和8年度は、税収が83兆7350億円で7年連続の過去最高を更新する一方、国民負担率は45.7%で2年連続の低下となる見通しです。

気になる数字が出てきたときは、まず財務省の公表資料で実績・見込み・見通しの区分を確認する習慣をつけると、報道の見出しに振り回されにくくなります。税収の絶対額、国民負担率、潜在的国民負担率という三つの数字を切り分けて見ることも役立ちます。

税収や負担率のニュースを目にしたときは、この記事の内訳を思い出しながら、ご自身の生活との関係を確認してみてください。

本記事の内容は執筆時点の公的情報をもとに整理したものです。制度・法令・人事等は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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