外国人が不起訴になったその後|在留資格への影響とは

外国人が不起訴になったその後について、在留資格への影響や今後の手続きを考える男性を表したイメージ画像 政治制度と法律の仕組み

外国人が刑事事件の被疑者となった場合でも、不起訴処分によって刑事手続が終わることは珍しくありません。前科はつかず、刑事裁判にも進まないため、いったん身柄は解放されます。

ただし、不起訴処分は刑事手続の終了を意味するにとどまり、在留資格や入管法上の問題まで解決したことにはなりません。刑事事件をきっかけに、別の入管法違反が明らかになる場合もあります。

この記事では、不起訴処分の種類と決まり方を整理したうえで、在留資格審査への影響、退去強制事由との関係、不起訴後に想定される手続きの流れを確認します。制度の枠組みを先に押さえておくと、落ち着いて今後を考えやすくなります。

不起訴処分とは何か、その種類と決まり方

刑事事件の被疑者となった場合、警察から検察官へ事件が引き継がれた後、起訴するか不起訴とするかは検察官が判断します。不起訴処分にはいくつかの種類があり、それぞれ理由が異なります。まずは基本の枠組みを整理します。

起訴と不起訴の基本的な違い

検察官が被疑者を裁判にかけると判断した場合を起訴、かけないと判断した場合を不起訴と呼びます。刑事訴訟法上、起訴の権限は検察官のみが持っており、これを起訴独占主義といいます。不起訴処分となれば刑事裁判は開かれず、前科もつきません。

前科がつかない一方で、捜査対象となった記録である前歴は残ります。前歴は法律上の資格制限には結びつきませんが、記録として保管される点には注意が必要です。日本人・外国人を問わず、この基本的な仕組み自体は共通しています。

不起訴処分の主な種類(起訴猶予・嫌疑不十分・嫌疑なし)

不起訴処分には複数の種類があります。犯罪の嫌疑が認められるものの、犯人の性格や年齢、境遇、犯罪の軽重などを考慮して検察官があえて起訴を見送る場合は、起訴猶予と呼ばれます。刑事訴訟法第248条が、この判断の法的根拠です。

一方、証拠が十分でなく有罪の立証が難しい場合は嫌疑不十分、犯人でないことが明白な場合は嫌疑なしとされます。犯罪が成立しない事情がある場合には、罪とならずという区分も用いられます。外国人の刑事事件でも、これらの区分の考え方自体は日本人の場合と変わりません。

不起訴処分の割合はどの程度か

法務省の犯罪白書によると、令和5年に検察庁が処理を終えた人員は79万1,457人で、このうち起訴された人は32.0%にとどまります。起訴猶予による不起訴が全体のなかで大きな割合を占めており、不起訴処分は決して例外的な結果ではありません。

この割合は罪名や年ごとに変動するため、最新の数値は法務省の犯罪白書のページで確認できます。逮捕・勾留された事件のすべてが刑事裁判に進むわけではなく、証拠関係や被害者との示談状況によって結論が左右される点が、この数値からも読み取れます。

不起訴処分の決定はいつ、どのように伝えられるか

逮捕・勾留された場合、勾留は原則10日間で、延長により最大20日間となり、その期間内に検察官が起訴・不起訴の判断を行います。 不起訴処分となれば、その時点で身柄は釈放されます。

起訴された場合は起訴状が届きますが、不起訴の場合は本人から請求しない限り、処分の内容や理由が詳しく伝えられないことがあります。不起訴処分告知書を検察庁に請求すれば、不起訴処分を受けた事実や処分の種類(起訴猶予・嫌疑不十分等)は確認できます。ただし、処分に至った詳細な理由まで記載されるとは限りません。

種類内容前科の有無
起訴猶予嫌疑はあるが事情を考慮し起訴を見送るつかない
嫌疑不十分証拠が不十分で有罪の立証が難しいつかない
嫌疑なし犯人でないこと等が明白つかない
罪とならず刑事未成年・正当防衛の成立等つかない

Q. 不起訴になれば前歴も消えますか。
A. 前科はつきませんが、捜査を受けた記録である前歴は残ります。前歴は法律上の資格制限には直結しませんが、記録自体が消えるわけではない点に注意が必要です。

Q. 不起訴の理由は必ず教えてもらえますか。
A. 検察官が理由を積極的に説明する義務はなく、本人が不起訴処分告知書を請求しない限り、詳しい理由が伝えられない場合があります。

  • 起訴・不起訴の判断権限は検察官のみが持つ
  • 不起訴処分には起訴猶予・嫌疑不十分・嫌疑なしなど複数の種類がある
  • 不起訴でも前科はつかないが、前歴という記録は残る
  • 起訴猶予による不起訴が全体の中で大きな割合を占める

不起訴になった場合に在留資格審査へ及ぶ影響

刑事事件が不起訴で終わったとしても、在留資格に関する審査への影響が消えるとは限りません。ここでは、在留期間の更新や在留資格の変更にどう関わってくるのかを整理します。

不起訴と在留資格は別の手続きで判断される

刑事手続と入管手続は、法律上別の枠組みで動いています。検察官が不起訴と判断しても、出入国在留管理庁が行う在留資格審査には、別の基準が適用されます。逮捕・勾留された事実自体は記録に残るため、更新審査の際に考慮の対象となることがあります。

在留資格の更新や変更の許可は法務大臣の裁量に委ねられており、素行や生活状況などが総合的に確認されます。刑事手続で不起訴という結論が出たことは考慮要素の一つにはなりますが、それだけで審査結果が自動的に決まるわけではありません。

在留期間の更新・変更手続きで見られやすいポイント

在留期間の更新申請や在留資格の変更申請では、素行が善良であるかどうかが確認されることがあります。逮捕・勾留された経緯が不起訴で終わっていても、その経緯自体を審査の材料として確認される可能性は否定できません。

もっとも、不起訴の理由が嫌疑なしや罪とならずである場合と、起訴猶予である場合とでは、事情の重みが異なる場合があります。審査の結果は個別の状況によって変わるため、心配な点があれば早めに専門家へ確認しておくと落ち着いて手続きを進められます。

別の入管法違反が発覚した場合の扱い

刑事事件の捜査をきっかけに、当初の容疑とは別の問題が判明することがあります。たとえば、在留期間を超えて滞在していたことや、許可されていない就労が発覚するケースです。

こうした事情が明らかになった場合には、当初の事件が不起訴であっても、別の入管法違反として扱われることがあります。新たに発覚した問題については、あらためて立件・起訴される可能性も残ります。当初の事件そのものとは別の話であるため、当初の不起訴処分の内容にかかわらず、独立した手続きとして扱われる点を理解しておく必要があります。

不起訴後も専門家に相談しておく意味

刑事手続と入管手続の両方に関わる問題であるため、刑事事件の結果だけを見て今後を判断するのは難しい場合があります。弁護士や行政書士など、入管法に詳しい専門家に相談しておくと、その後の見通しを立てやすくなります。

刑事事件を担当した弁護士と、入管手続に詳しい専門家が異なる場合には、両者の間で状況を共有しておくと、対応の抜け漏れを防ぎやすくなります。早い段階で相談しておけば、必要な資料をそろえる時間的な余裕も確保しやすくなります。

不起訴処分になっても、在留資格の問題が自動的に解決するとは限りません。
逮捕・勾留の経緯は記録として残り、更新審査で考慮されることがあります。
別の入管法違反が判明した場合は、当初の事件とは別に扱われます。

例えば、在留期間の更新を予定している場合は、更新時期より前に、逮捕・勾留の経緯について弁護士など専門家に相談しておくと、必要な説明資料を準備しやすくなります。

  • 刑事手続と入管手続は別の枠組みで判断される
  • 不起訴でも逮捕・勾留の経緯は審査で考慮されうる
  • 別の入管法違反が発覚すれば、当初の不起訴とは別に扱われる
  • 早めに専門家へ相談しておくと見通しを立てやすい

退去強制事由と不起訴処分の関係(入管法第24条)

退去強制は、日本にいる外国人を対象とした行政上の手続きです。不起訴処分と退去強制事由がどのように関係しているのかを、入管法の条文に沿って確認します。

退去強制事由とは何か

出入国管理及び難民認定法(入管法)第24条には、退去強制の対象となる外国人の事由が列挙されています。不法入国や不法残留、一定の刑罰法令違反などが代表的な例です。

退去強制の判断では、故意や過失の有無は要件とされず、行政的な基準にもとづいて判断される点が、刑事罰とは異なります。外交官や駐留する軍関係者など、一部の立場にある人は別の枠組みで扱われる点も押さえておくとよいでしょう。列挙されている事由は多岐にわたるため、自分の状況がどれに当たりうるかは条文と個別の事情を照らし合わせて確認する必要があります。

不起訴処分は直ちに退去強制事由に当たるか

外国人が不起訴になったその後の在留資格への影響や法的手続き、今後の生活への関わりを表すイメージ画像

退去強制事由には、一定の刑に処せられたことを前提とするものがある一方で、不法入国や不法残留など刑罰を前提としない事由も含まれています。不起訴処分となれば有罪判決を受けたことにはならないため、刑罰法令違反を前提とする退去強制事由には該当しませんが、別の事由に該当するかどうかは別途確認が必要です。

したがって、不起訴処分の一報だけをもって、直ちに退去強制の対象となるわけではありません。もっとも、これは在留資格の問題がすべて解決したことを意味するものではない点に注意が必要です。逮捕・勾留の経緯や、捜査の過程で判明した別の事情が、その後の審査に影響することもあります。

退去強制手続の大まかな流れ

退去強制に該当する疑いがある場合、入国警備官による違反調査から始まり、入国審査官の審査、特別審理官による口頭審理、法務大臣による裁決という段階を経て手続きが進みます。

最終的に退去強制令書が発付されると、在留資格は確定的に失われます。各段階で不服を申し立てる機会が設けられており、口頭審理や異議の申出を通じて、事情を説明する余地が確保されています。手続きの途中で在留特別許可が認められれば、退去強制令書の発付には至らず、引き続き日本に在留できる場合があります。

特別永住者など、扱いが異なる場合

在日コリアンなど特別永住者については、特別永住者に関する法律にもとづく特例があり、一般の外国人とは異なる扱いを受けます。在留資格の種類によって、退去強制事由の適用範囲が変わる点にも注意が必要です。

自分がどの在留資格に該当するのか、また特例の対象となるのかどうかがはっきりしない場合には、出入国在留管理庁の窓口や専門家に確認しておくと安心です。永住者や定住者など、身分にもとづく在留資格を持つ場合も、就労系の資格とは考慮される事情が異なることがあります。

区分内容
不法入国・不法上陸有効な旅券や上陸許可なしに入国・上陸した場合
不法残留在留期間を超えて滞在した場合
資格外活動許可された範囲を超えて収入を伴う活動をした場合
一定の刑罰法令違反懲役・拘禁刑等一定の刑に処せられた場合

Q. 不起訴になれば退去強制の心配はなくなりますか。
A. 有罪判決を前提とする退去強制事由には当たりませんが、不法残留など別の事由が判明すれば、退去強制手続が別途進む可能性があります。

Q. 退去強制令書が出た後に取り消すことはできますか。
A. 法務大臣の裁決までの間に在留特別許可が認められれば、退去強制を免れる余地があります。裁決後の取消しは基本的に想定されていません。

  • 退去強制事由は入管法第24条に列挙されている
  • 不起訴処分は有罪判決を前提とする退去強制事由には当たらない
  • 別の入管法違反が判明すれば退去強制手続が進む可能性がある
  • 特別永住者など在留資格の種類によって扱いが異なる場合がある

不起訴後に開始されうる入管の手続きと在留特別許可

不起訴処分の後、状況によっては入管による手続きが並行して進むことがあります。ここでは、在留特別許可や出国命令など、押さえておきたい制度を確認します。

違反調査から始まる入管手続き

刑事事件の捜査の過程で在留資格に関する問題が判明した場合、出入国在留管理庁による違反調査が始まることがあります。刑事事件が不起訴で終わっていても、入管法違反の疑いがあれば、この調査は別に進められます。

違反調査では、在留カードの提示や事情聴取が求められることがあり、刑事事件の記録が資料として参照される場合もあります。違反調査の呼び出しを受けた場合には、指定された日時に応じ、事実関係を整理したうえで説明することが大切です。

在留特別許可という制度

退去強制事由に該当すると判断された場合でも、法務大臣が特別に在留を許可する制度があります。これが在留特別許可です。家族関係や生活の実態、素行、納税状況などが総合的に考慮されます。

在留特別許可はあくまで法務大臣の裁量によるものであり、該当する事情があれば必ず許可されるという制度ではありません。判断にあたっては、これまでの在留期間の長さや、日本での生活基盤の有無なども合わせて確認されます。日本国籍の子どもを養育している場合など、家族関係に関する事情は特に重視されやすい傾向があります。

出国命令制度との違い

不法残留者のみを対象とする出国命令制度では、退去強制ではなく簡易な手続きで出国できる制度です。違反調査の開始前に自ら出入国在留管理官署に出頭する(または違反調査開始後でも退去強制事由該当の通知を受ける前に出国意思を表明する)こと、不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと、過去に退去強制や出国命令を受けて出国したことがないことなど、複数の条件を満たす必要があります。

出国命令の対象となった場合、退去強制に比べて手続きが簡略化される一方、期限までに出国しなければ別途刑事罰の対象となることがあります。出国命令を受けた場合の上陸拒否期間は、通常の退去強制の場合よりも短く設定されている点も特徴です。

仮放免制度について

収容された場合でも、健康上や人道上の特別な事情があるときに、住居や行動範囲の制限などの条件のもとで一時的に収容を解除する仮放免という制度があります。なお、2024年の改正入管法により、収容を伴わない監理措置制度が新設されており、収容解除の原則的な手段は監理措置となっています。仮放免には保証金の納付などの条件が付されることがあります。

仮放免が認められるかどうかは個別の事情を考慮した判断であり、住居や身元保証人の有無なども確認される点に留意が必要です。仮放免中は基本的に就労ができず、生活面での制約も生じるため、その間の過ごし方についても事前に確認しておくと安心です。 指定された条件に違反すると、仮放免が取り消される可能性がある点にも注意が必要です。

在留特別許可は法務大臣の裁量による制度です。
家族関係や生活実態、素行などが総合的に考慮されます。
該当する事情があっても、必ず許可されるとは限りません。

例えば、日本人の配偶者や子どもがいる場合は、その関係を示す資料をそろえておくと、在留特別許可の判断において考慮されやすくなります。

  • 入管の違反調査は刑事手続とは別に進むことがある
  • 在留特別許可は法務大臣の裁量による制度である
  • 一定の要件を満たせば出国命令という形が取られる場合がある
  • 収容中でも仮放免という制度がある

不起訴になった後、再び問われる可能性はあるか

不起訴処分は、その時点での結論にすぎません。一定の条件のもとでは、後から起訴されたり、別の手続きが動き出したりする可能性があります。最後にこの点を確認します。

起訴猶予はやり直しがきくのか

起訴猶予による不起訴処分は、公訴時効が完成するまでの間、確定した結論ではありません。新たな証拠が見つかったり、起訴猶予が相当でないと判断される事情が生じたりすれば、あらためて起訴される可能性があります。時効の期間は罪の重さによって異なるため、どの程度の期間、この状態が続くのかは事件ごとに変わります。

不安がある場合は、時効の完成時期を弁護士に確認しておくと、見通しが立てやすくなります。反省の態度を示す資料や再発防止の取り組みを整理しておくことも、将来的な安心材料になります。

嫌疑不十分・嫌疑なしの場合はどうか

嫌疑不十分や嫌疑なしによる不起訴処分についても、時効完成前であれば、新たな証拠にもとづいて再捜査や起訴が行われる余地は残ります。不起訴処分は、捜査が完全に終了したことを意味するものではありません。証拠が後から見つかる背景には、関係者の証言が新たに得られる場合や、鑑定結果が追加される場合などがあります。したがって、不起訴の通知を受けた段階で、すべての手続きが完全に終わったと考えるのは早いといえます。

民事上の責任は別に残る

刑事手続で不起訴となっても、被害者に対する損害賠償など民事上の責任が消えるわけではありません。示談が成立していない場合は、民事訴訟という形で問題が続く可能性があります。刑事手続の中で示談を済ませておくと、民事上の紛争を早期に収束させやすくなるという側面もあります。

示談書に清算条項を盛り込んでおけば、後日あらためて金銭を請求されるリスクを抑えることにもつながります。刑事手続と民事手続は目的が異なるため、片方が終わってももう一方が別の時期に進む場合がある点も押さえておきましょう。

制度を正しく理解しておく意味

不起訴処分という言葉だけを見て、すべての問題が解決したと考えるのは早計です。刑事手続、入管手続、民事上の責任は、それぞれ別の枠組みで動いています。

それぞれの制度を切り分けて理解しておくと、今後の対応を落ち着いて考えやすくなります。どの制度がどの段階で動くのかを整理しておけば、必要な相談先を早めに見つけやすくなります。刑事事件に強い弁護士と入管手続に詳しい専門家、双方の視点を持っておくことが、結果的に無駄のない対応につながります。

論点内容
再捜査・再起訴時効完成前は新証拠により起訴される可能性がある
入管手続別の入管法違反が判明すれば別途進行する
民事責任示談が未成立なら損害賠償請求の余地が残る

Q. 不起訴になれば前歴も含めて記録は残りませんか。
A. 前科はつきませんが、捜査対象となった記録である前歴は残ります。将来の判断において考慮される可能性があります。

Q. 不起訴処分に不服を申し立てる制度はありますか。
A. 被害者側には検察審査会への申立て制度がありますが、被疑者側が不起訴処分そのものを争う制度は基本的に想定されていません。

  • 起訴猶予は時効完成まで確定した結論ではない
  • 嫌疑不十分・嫌疑なしでも再捜査の余地は残る
  • 民事上の責任は刑事手続とは別に存在する
  • 複数の制度を切り分けて理解しておくことが大切

まとめ

不起訴処分は刑事手続の一つの区切りにすぎず、在留資格や入管法上の手続きまで自動的に解決するものではありません。

在留期間の更新や変更を予定している方は、逮捕・勾留の経緯について、入管法に詳しい専門家へ早めに相談しておくと安心です。

制度の枠組みを一つずつ押さえておくことが、落ち着いて今後を判断するための土台になります。

本記事の内容は執筆時点の公的情報をもとに整理したものです。制度・法令・人事等は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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