選挙ラインでできることを知ろう｜SNS時代の選挙運動の基本知識

近年、選挙活動においてもSNSの存在感が高まっています。その中でも、身近で利用者が多いLINEは、候補者や有権者にとって重要なツールとなりつつあります。しかし、LINEを使ったやり取りには公職選挙法による細かなルールがあり、内容や時期を誤ると違反となる可能性があります。

本記事では「選挙ラインでできること」をテーマに、公示前から投票日までの流れに沿って、候補者・陣営・一般有権者がLINEをどのように使えるのかを整理します。送信できるメッセージの種類、利用できる機能、そして注意すべき点を具体的に解説します。

政治に詳しくない方でも理解できるよう、身近な例を交えながら解説します。記事を読み終えれば、LINEを活用する際に「これは大丈夫」「ここは注意が必要」と判断できるようになり、安心して情報発信や受け取りができるようになるはずです。

選挙ラインでできることをまず整理（定義と基本ルール）

まずは「選挙ライン」とは何か、その基本的な意味から整理していきましょう。LINEは多くの人が利用しているため、選挙活動においても関心が高まっていますが、実際には法律上の制約やルールが存在します。本章では、LINEを用いた活動の位置づけを明確にしていきます。

「選挙ライン」とは何か（用語の整理）

「選挙ライン」という言葉は法律用語ではありません。一般的には、LINEを利用して候補者や有権者が選挙関連の情報をやり取りする行為を指す言葉として使われます。具体的には、候補者が公式アカウントを開設し政策を配信したり、有権者同士が友人に投票を呼びかけるなどの行為です。つまり、日常的なコミュニケーションアプリを政治活動の場として使う動きが「選挙ライン」と表現されているのです。

政治活動と選挙運動の違いをLINEでどう見分けるか

政治活動と選挙運動は似ているようで区別が重要です。政治活動は政策を広めたり意見交換を行うことを指し、時期を問わず自由に行えます。一方、選挙運動は特定の候補者に投票を依頼する行為で、公示日から投票日前日までの期間しか認められていません。LINE上で「○○さんを応援しましょう」と具体的に投票を呼びかければ選挙運動になります。区別を誤ると法令違反につながるため、注意が必要です。

LINEで一般有権者ができること・できないこと

一般有権者はLINEを通じて選挙情報を共有することは可能ですが、できることとできないことがあります。例えば、候補者の演説日程を伝えたり、政策記事のリンクを送ることは認められます。一方で「○○候補に必ず投票して」と依頼する行為は、公職選挙法違反となる場合があります。つまり、情報共有は良くても直接的な投票依頼はNGという点を理解しておく必要があります。

候補者・陣営がLINEでできる基本行為

候補者や陣営は公式アカウントを開設し、政策や活動予定を発信できます。メルマガやポスターに代わり、LINEは迅速で低コストな情報伝達手段となっています。ただし、送信メッセージには発行者名や責任者を明示する必要があり、匿名での発信は認められません。さらに、過度な送信や誤解を招く表現は逆効果となり、有権者の信頼を損なう可能性があります。

なぜLINE活用が広がるのか（到達率・即時性・双方向性）

LINEはメールに比べ開封率が高く、メッセージが届いた瞬間に見てもらえる即時性があります。また、双方向のやり取りがしやすく、有権者の声を直接聞ける点も強みです。さらに、日本国内での利用者数が非常に多いため、幅広い世代に情報を届けやすい特徴があります。こうした点から、選挙活動においてLINEは欠かせない手段となりつつあります。

具体例：例えば、候補者が公式LINEで「明日の駅前演説にぜひお越しください」と送るのは合法ですが、「私に投票してください」と送るのはNGです。同じLINEでも表現次第で違法かどうかが分かれる点が注意点です。

• 「選挙ライン」とは一般的な呼び方であり法律用語ではない
• 政治活動と選挙運動は期間と内容で区別される
• 一般有権者は情報共有はOK、投票依頼はNG
• 候補者・陣営は公式アカウントで責任表示が必須
• LINEは即時性・開封率の高さで注目されている

期間別：公示（告示）前・選挙運動期間・投票日のLINE活用OK/NG

次に、選挙におけるLINE利用を時期ごとに見ていきましょう。選挙関連のルールは「いつ」「どのタイミングで」発信するかによって大きく変わります。公示・告示前、選挙運動期間中、投票日当日ではできることと禁止されていることが異なります。

公示・告示前にできる情報発信と注意点

公示・告示前は政治活動の期間にあたるため、政策や活動内容をLINEで発信することは自由です。例えば「教育政策をまとめた記事を更新しました」と送ることは問題ありません。ただし、特定候補者への投票を依頼するような表現は選挙運動と見なされるため禁止です。つまり、活動報告や政策発表は良くても、投票依頼の要素を含めてはいけない点に注意しましょう。

選挙運動期間中にできる依頼や案内のポイント

選挙運動期間中は特定候補者への投票依頼が認められます。LINEを用いて「○○候補をよろしくお願いします」といったメッセージを送ることは可能です。ただし、送信内容には責任者の表示を忘れてはいけません。さらに、迷惑メールのように頻繁に送ると逆効果になるため、1日数回程度に抑えるのが実務上の工夫です。丁寧で節度ある発信が有権者の信頼を高めます。

期日前投票期間の扱いと送信タイミング

期日前投票期間は選挙運動期間に含まれるため、投票依頼も可能です。実際には「期日前投票が始まりました、ぜひご参加ください」と案内するメッセージがよく見られます。ただし、投票所の場所や日時を誤って伝えると混乱を招くため、公式情報を引用することが大切です。誤情報の拡散は法的リスクだけでなく信頼性の低下にもつながります。

投票日前日までに許される行為／当日に禁止される行為

選挙運動は投票日前日まで認められています。したがって「明日は投票日です、○○候補をよろしくお願いします」というメッセージは前日なら合法です。しかし投票日当日は一切の選挙運動が禁止されており、LINEでの投票依頼は違法行為となります。投票当日は「今日は投票日です。投票に行きましょう」という呼びかけまでにとどめるのが正しい対応です。

開票後・当選後にできる振り返り発信

投票日を過ぎると選挙運動は終了しますが、活動報告や御礼の発信は可能です。「ご支援いただきありがとうございました」といった感謝のメッセージや、「これから政策実現に向けて取り組みます」といった今後の抱負は問題ありません。ただし、当選直後に過度な宣伝や再びの投票依頼を行うと誤解を招くため、バランスが求められます。

ミニQ&A：

Q1：投票日当日に「投票に行こう」と送ってもいい？
A1：はい、特定候補名を挙げなければ問題ありません。「投票に行きましょう」という一般的な呼びかけは合法です。

Q2：当選後に「次の選挙もお願いします」と送るのは？
A2：これは将来の投票依頼に当たるため違法となります。御礼や今後の抱負にとどめる必要があります。

• 選挙の時期ごとにLINEでできることは異なる
• 公示前は政策発信はOK、投票依頼はNG
• 選挙運動期間は投票依頼が可能だが責任表示が必須
• 投票日当日は一切の投票依頼は禁止
• 開票後は御礼や抱負の発信は可能

手段別：個別トーク・グループ・タイムライン・公式アカウント等でできること

LINEにはさまざまな機能があり、どの機能を使うかによって法的な扱いやリスクが変わります。個別トーク、グループトーク、タイムライン投稿、公式アカウントの利用など、それぞれの特徴を理解することが必要です。

個別トーク（1対1）での依頼・周知の可否

個別トークでは、相手が友人や知人であれば投票依頼を行うことができます。ただし、送信回数が多すぎると迷惑行為と見なされる恐れがあります。また、未成年者に対して依頼をすることは禁じられています。つまり、親しい関係の範囲で節度を守って使うのが正しい運用です。

グループトーク・一斉送信の扱いとリスク

グループトークや一斉送信は、拡散力が高い一方でリスクもあります。特に大人数グループでは、誰が発信したか責任が曖昧になるケースがあり、違法性が問われやすくなります。内容を送信する際には責任者を明示し、過度な依頼や不適切な表現を避ける必要があります。

タイムライン・投稿機能での表現と拡散

タイムラインはフォロワー全員に届くため、候補者が公式発信をするには有効です。ただし、不特定多数に向けた拡散となるため、文面に責任者表示を欠かしてはいけません。匿名の情報拡散や、誹謗中傷の書き込みは即座に違法と判断される可能性があります。

LINE公式アカウントの運用（友だち追加・配信設計）

公式アカウントは選挙活動で最も活用される手段の一つです。友だち追加をしてもらい、計画的に配信することで有権者に確実に情報を届けられます。ただし、発信には責任者や連絡先を明示する必要があります。また、解除しやすい仕組みを提供することが、信頼を維持するために重要です。

オープンチャット等のコミュニティ機能の留意点

オープンチャットは匿名性が高く、自由な議論ができる反面、違法投稿が出やすい環境でもあります。管理者がきちんと監視し、問題投稿を削除する対応が不可欠です。責任の所在が不明確にならないよう、管理体制を整える必要があります。

具体例：ある候補者は公式LINEで週に2回、政策や活動予定を発信し、有権者から好評を得ました。しかし一方で、個別トークを1日に何度も送ったケースでは「しつこい」と反発を招き、逆効果となった事例もあります。

• 機能ごとにできること・注意点が異なる
• 個別トークは親しい関係で節度を守る
• グループや一斉送信は責任者表示が必須
• タイムライン投稿は公的発信として扱う
• オープンチャットは監視と管理が不可欠

文面と表示のルール：公職選挙法で注意すべきポイント

LINEでの選挙活動では「どんな文面で」「誰が責任を持つか」という点が極めて重要です。表現の仕方や記載の有無で、合法か違法かが分かれてしまいます。本章では、代表的な文面ルールと注意点を整理します。

氏名・責任者等の表示と「なりすまし」防止

候補者や陣営がLINEでメッセージを送る際は、発行者名や責任者を必ず表示する必要があります。これは有権者が発信元を正しく把握するためであり、匿名やなりすましを防ぐ意味があります。責任者表示を欠くと違法とされるリスクが高くなるため、必ず記載しましょう。

メールはNG・LINEはOKと言われる理由（メディア差の整理）

公職選挙法では、メールを使った投票依頼は禁止されています。一方でLINEはSNSに分類され、合法的に利用可能です。これは、メールが一方的な配信手段であるのに対し、LINEは双方向性がある点が考慮されているためです。ただし、ルールが緩いわけではなく、表示や表現の注意は必要です。

虚偽・誹謗中傷・名誉毀損を避けるためのチェック

LINEでの選挙活動でも、虚偽の情報や誹謗中傷は厳しく規制されています。「相手候補は不正をしている」といった根拠のない投稿は名誉毀損にあたり、刑事罰の対象となることもあります。送信前に事実確認を徹底し、一次情報に基づく内容に限定することが重要です。

未成年者（18歳未満）に関する制限と配慮

18歳未満は選挙運動が禁止されています。そのため、未成年者が参加しているグループに投票依頼を送ると違法行為となります。送信先をきちんと確認し、未成年者が含まれる可能性がある場合には配慮が必要です。候補者だけでなく、有権者側も気を付けるべきルールです。

通報・削除・違反と判断されやすいケース

違法性が疑われるLINE投稿は、選挙管理委員会やプラットフォームによって通報・削除される場合があります。特に責任者の記載がない投稿や、虚偽情報を含む投稿は対象になりやすいです。発信者としての責任を意識し、文面を丁寧に確認することが求められます。

ミニQ&A：

Q1：LINEの送信文に「発行責任者○○」と書くのは必須ですか？
A1：はい、必須です。責任者の表示を欠くと違反となる可能性があります。

Q2：事実確認せずにSNSで見た情報を転送しても大丈夫？
A2：いいえ、虚偽情報の拡散に当たり、処罰の対象になる可能性があります。必ず一次情報を確認してください。

• 責任者の表示は必須であり、匿名は違法行為
• LINEはOKだがメールでの投票依頼はNG
• 虚偽情報や誹謗中傷は処罰対象
• 18歳未満への依頼は禁止
• 違法性が疑われれば通報や削除の可能性がある

実務で役立つテンプレ・運用フロー

ここでは実際にLINEを利用して選挙活動を行う際に役立つテンプレートや運用の流れを紹介します。候補者や陣営だけでなく、一般有権者が友人や家族に伝えるときにも使える具体的な例を示すことで、迷わず活用できるようにします。

候補者・陣営向け：依頼メッセージ文例と頻度設計

候補者や陣営が投票依頼を送る場合は、シンプルかつ丁寧な文面が基本です。例えば「本日○○駅前で演説を行います。ぜひお立ち寄りください。発行責任者：□□」といった形です。頻度は1日数回までに抑え、情報過多にならないよう注意しましょう。過度な送信は信頼を損ないます。

一般有権者向け：友人・家族へ伝えるときの言い回し

一般有権者は友人や家族に選挙の話をすることができますが、直接的な「必ず投票して」という表現は避けるべきです。代わりに「この候補の政策が気になったから見てみて」といった形で情報を共有するのが安全です。強制的な言い方はトラブルの元になります。

配信カレンダーとセグメント（誰に何をいつ）

効果的にLINEを運用するには配信計画を立てることが重要です。例えば、公示直後に政策紹介、期間中盤に演説案内、終盤に投票呼びかけを行うといった流れです。また、対象者をセグメントごとに分けて「学生向け」「子育て世代向け」などのメッセージを送ると、共感を得やすくなります。

記録・エビデンスの残し方（スクショ・ログ）

発信内容は記録を残すことが望まれます。スクリーンショットや送信履歴を保存しておけば、万一のトラブル時に「違反していない」と証明できます。特に責任者表示を行ったことや送信日を残しておくことは実務的に有効です。

炎上・ブロックを避けるためのマナーとオプトアウト

選挙活動で炎上すると信頼が失われるだけでなく法的リスクにもつながります。文面は礼儀正しく、過剰な送信は避けましょう。また、受信者が配信を停止できるオプトアウト（解除）機能を整えておくことが、トラブルを防ぐ鍵になります。

具体例：ある市議会候補は、公示直後に「政策パンフレットを公開しました」、投票日前日に「明日はいよいよ投票日です」と配信しました。メリハリのある運用により、有権者から「わかりやすい」と好意的に受け止められた事例です。

• 候補者の配信は責任表示が必須
• 一般有権者は友人への情報共有にとどめる
• 配信は計画性とセグメント化が鍵
• 証拠を残すことでトラブルを防ぐ
• 解除機能を整え信頼を損なわない工夫が必要

よくある質問（FAQ）

最後に、LINEを活用した選挙運動でよく寄せられる質問を整理します。法律的にグレーに見える部分も多いため、具体的な疑問を事前に解決しておくことが重要です。

一斉送信や転送はどこまで許される？

候補者や陣営が公式アカウントから一斉送信することは可能です。ただし責任表示が必須です。一方で、有権者が受け取ったメッセージを無制限に転送するのは注意が必要です。転送自体は違法ではありませんが、過度な拡散は選挙違反に問われやすい行為とされています。

スタンプ・画像・動画・URLは送ってよい？

スタンプや画像、動画を使うこと自体は可能です。ただし内容が誤解を招かないものであることが条件です。候補者の似顔絵スタンプやユーモアのあるイラストを使う例もありますが、虚偽情報や誹謗中傷に当たるものは即座に違法とされます。送る前に一度確認しましょう。

グループ内の「投票依頼」は誰が責任を負う？

グループ内での投票依頼は、投稿者本人に責任が及びます。仮に「みんなで○○候補を応援しよう」と呼びかけた場合、その発言者が法的責任を負います。管理者や他のメンバーは直接の責任を問われにくいですが、削除しなければ間接的に問題視される可能性もあります。

違反が疑われる投稿を見つけたらどうする？

違反が疑われる投稿を見つけた場合、選挙管理委員会に通報することが推奨されます。証拠としてスクリーンショットを残し、発信日時や発信者情報を添えると調査がスムーズになります。違法性を個人で判断せず、専門機関に委ねるのが安全です。

迷ったときの選挙管理委員会への相談方法

「この表現は大丈夫か」と迷ったときは、地域の選挙管理委員会に確認するのが最も確実です。電話や窓口での相談が可能で、公式の見解を得られます。自己判断に頼るより、事前に確認することでリスクを避けられます。

具体例：例えば、ある市民が受け取った動画をそのまま転送しようとしましたが、内容が不確かなため選挙管理委員会に確認。結果的に誤情報と判明し、拡散を防げたケースがあります。

• 候補者の一斉送信はOKだが有権者の転送は慎重に
• スタンプや画像は健全な内容に限る
• グループでの依頼は発言者が責任を負う
• 違反投稿は選管に通報が安全
• 迷ったら自己判断せず選管に確認する

まとめ

LINEを利用した「選挙ライン」は、現代の選挙活動において大きな存在感を持つようになっています。開封率の高さや即時性といった強みがある一方で、公職選挙法のルールに基づいて正しく活用することが欠かせません。特に「誰が」「どの時期に」「どのような内容を」送るかによって、合法か違法かが分かれる点が重要です。

有権者にとっては、情報を受け取り正しく判断するための手段としてLINEは役立ちますが、安易に投票依頼を転送したり、根拠のない情報を広めると違法となる場合があります。候補者や陣営にとっても、責任表示や表現の適切さを守ることが信頼を築く第一歩です。

結論として、LINEを活用すること自体は認められていますが、ルールを守らなければ逆効果になります。利用者一人ひとりが「法律を理解し、節度ある発信を行う」という意識を持つことが、健全な選挙環境をつくるために欠かせません。