法定得票数は、選挙で「当選」と言える最低ラインを示す決まりです。得票がいちばん多くても、このラインに届かないと当選者が出ないことがあります。
ニュースで「再選挙になった」と聞くと不思議に感じますが、背景にはこうした数字のルールがあります。似た言葉に供託金没収点もあり、ここを混同すると話がややこしくなりがちです。
この記事では、選挙の種類ごとの計算の考え方と、届かなかったときに何が起きるのかを、できるだけかみ砕いて整理します。数字が苦手な方でも追えるように、ポイントを順番に見ていきます。
法定得票数とは何か:当選要件としての意味
まず押さえたいのは、法定得票数が「当選の条件」だという点です。得票が多いだけでは足りず、一定以上の支持があるかを数字で確かめる仕組みになっています。
「最多得票」でも当選できない理由
選挙は、いちばん多く票を集めた人が当選するという印象が強いですよね。ただし実際は、最多得票者でも当選できない場面があります。
それが、最多得票者の票が法定得票数に届かないときです。支持が細かく割れて「1位だけれど票が極端に少ない」状態だと、代表として選ぶのは無理があると考え、当選者なしになります。
法定得票数が決まる基本パターン
法定得票数は、選挙の種類ごとに計算の考え方が決まっています。材料になるのは、基本的に有効投票総数(正しく数えられた票の合計)です。
国政選挙の小選挙区は「有効投票総数の一定割合」という形がわかりやすい例です。一方で、定数が複数いる選挙では「有効投票総数を定数で割る」手順が入り、1人あたりの目安に直します。
代表としての「最低ライン」を置く考え方
法定得票数があると、候補者が乱立して票がばらけても、極端に少ない票で代表が決まるのを防げます。つまり「最低限これだけの支持は必要」という線引きです。
一方で、票が割れた結果として当選者が出ず、もう一度投票をすることもあります。手間や費用は増えますが、代表性を担保するための安全装置だと捉えると理解しやすいでしょう。
よく混同する用語:得票率・有効票・無効票
法定得票数の話でつまずきやすいのが「何を分母にするのか」です。使うのは投票総数ではなく、有効投票総数である点が大切です。
無効票は、書き方の誤りなどで票として数えられないものです。得票率という言い方も耳にしますが、制度の判定で見るのは割合そのものより「有効投票総数に対して何票か」という形だと覚えると整理しやすいです。
材料は主に有効投票総数
票が割れると当選者なしの可能性もある
ここまでで土台ができたところで、次は選挙別にどう計算の形が変わるのかを見ていきます。数字の出し方がわかると、報道の見え方も少し変わってきます。
Q:1位なら必ず当選ではないのですか? A:最多得票でも、法定得票数に届かないと当選者が出ない仕組みがあります。
Q:何を基準に計算しますか? A:投票総数ではなく、有効投票総数を材料にするのが基本です。
- 法定得票数は当選要件として働く
- 有効投票総数が計算の出発点になる
- 票が割れると当選者なしが起こりうる
- 用語の違いを先に整理すると迷いにくい
法定得票数の計算方法:選挙の種類でどう変わる
前のセクションで「当選の最低ライン」だと分かったら、今度は計算の形を押さえましょう。ポイントは、国政と地方、定数が1か複数かで式が変わるところです。
衆議院小選挙区は「有効投票総数の6分の1」
衆議院の小選挙区は、当選者が1人です。このため考え方がシンプルで、有効投票総数の6分の1以上の得票が必要とされています。
例えば有効投票総数が60,000票なら、6分の1は10,000票です。1位が9,900票のように線に届かないと、最多得票でも当選者なしになり得るので、ここが「数字の壁」になります。
参議院選挙区は「定数で割ってから6分の1」
参議院の選挙区は、定数が複数の場合があります。そこでまず、有効投票総数をその選挙区の定数で割り、1議席あたりの目安を作ってから6分の1を取ります。
つまり「有効投票総数 ÷ 定数 ÷ 6」が目安になります。定数が増減する選挙もあるので、同じ票数でも必要ラインが変わる点に注意すると、報道の数字が読みやすくなります。
首長選挙は「有効投票総数の4分の1」
市長や知事など、地方公共団体の長の選挙では、有効投票総数の4分の1以上の得票が当選の条件になります。割合で言うと25%です。
首長は行政の代表として権限が大きいので、一定以上の支持を求める考え方がはっきり出ています。候補者が多いと票が割れやすく、この25%に届かないケースがまれに起きます。
地方議会は「定数で割ってから4分の1」
市議会や県議会などの議員選挙は、定数が複数です。そのため、有効投票総数を定数で割り、そこから4分の1を取る形になります。
式のイメージは「有効投票総数 ÷ 定数 ÷ 4」です。定数が多いほど1人あたりの基準が小さくなるので、「議員選挙は首長選よりラインが低く見える」理由がここにあります。
| 選挙の種類 | 法定得票数の考え方 | 計算の材料 |
|---|---|---|
| 衆議院小選挙区 | 有効投票総数の6分の1以上 | 有効投票総数 |
| 参議院選挙区 | (有効投票総数÷定数)の6分の1以上 | 有効投票総数・定数 |
| 地方公共団体の長 | 有効投票総数の4分の1以上 | 有効投票総数 |
| 地方議会の議員 | (有効投票総数÷定数)の4分の1以上 | 有効投票総数・定数 |
式が見えたところで、次は「似た言葉」の供託金没収点に移ります。ここを切り分けられると、当選とお金の話がごちゃつかなくなります。
例として、市長選挙で有効投票総数が40,000票なら、法定得票数はその4分の1で10,000票です。最多得票が9,800票だと、いちばん多くても当選者が出ません。
一方で市議会議員選挙(定数20人)で有効投票総数が40,000票なら、まず2,000票に割ってから4分の1で500票が目安になります。同じ有効票でも、選挙の性格でラインが変わります。
- 衆院小選挙区は6分の1で覚えると整理しやすい
- 定数がある選挙は「割ってから割合」が基本
- 首長選は4分の1で代表性を強く求める
- 計算の材料は有効投票総数が中心
供託金没収点との違い:似ているけれど目的が別
計算が分かったところで、次に混同されやすい供託金没収点を整理します。法定得票数と並んで語られますが、狙いも結果も別物なので、線を引いて理解すると安心です。
法定得票数は「当選の条件」
法定得票数は、当選者として認められるための条件です。届かなければ、最多得票でも当選者がいない扱いになり、再選挙につながることがあります。
言い換えると、これは「有権者の代表としての最低限の支持」を確かめるルールです。候補者本人の損得よりも、選ばれる側の正当性を担保する意味合いが強い仕組みです。
供託金没収点は「供託金が戻るか」の線
供託金没収点は、供託したお金(または国債など)が返ってくるかどうかの基準です。一定の票に届かない場合、供託物が没収されるというルールになります。
つまり、当選できるかとは別に「極端に票が少ない立候補」を抑えるための仕掛けです。選挙を真剣勝負にするためのハードルで、制度の目的が少し違います。
没収点の代表的な考え方
没収点は選挙の種類で異なりますが、目安としては「有効投票総数の10分の1」や「有効投票総数を定数で割ってから10分の1」などがよく使われます。
例えば衆議院小選挙区や市長選挙は、有効投票総数を10で割った数が目安になります。参議院選挙区や地方議会は、定数で割ってから10で割る形が基本なので、ここも手順を間違えないのが大切です。
両方を見ると「制度の狙い」が見えてくる
法定得票数は「当選の正当性」を守り、供託金没収点は「立候補の乱立を抑える」方向に効きます。似た言葉でも、守りたいものが違うわけです。
この違いを知っておくと、報道で「当選できなかった」話と「供託金が没収された」話を分けて理解できます。両方が絡むときもありますが、まずは別のルールとして頭の中で棚を分けると混乱しにくいです。
供託金没収点は「お金が戻るか」の線
目的が違うので、ニュースも分けて読むと楽になります
ここまでで、数字のルールが2本立てだと見えてきました。次は、法定得票数に届かなかった場合に実際どんな流れになるのかを、再選挙の話とセットで確認します。
Q:法定得票数に届かないと供託金も必ず没収ですか? A:別の基準なので必ずしも一致しません。没収は没収点の条件で決まります。
Q:供託金の話は当選と関係ないのですか? A:当選の可否とは別ですが、得票が少ないと没収になりやすく、結果として選挙のハードルになります。
- 当選の線と、供託金の線は別にある
- 法定得票数は代表性を守るための条件
- 没収点は乱立を抑えるための条件
- 手順(定数で割るか)を間違えると見誤る
法定得票数に届かないとどうなる:再選挙と実務の流れ
違いが整理できたら、いちばん気になる「届かなかったらどうなるのか」に進みます。結論から言うと、当選者がいない扱いになり、後日あらためて投票を行うことがあります。
当選者がいない状態が起きるケース
当選者がいないのは、最多得票者が法定得票数に届かなかったときです。特に首長選挙で25%に届かないと、1位でも当選できません。
候補者が多く、支持がきれいに割れると起こりやすくなります。逆に言えば、2人や3人の争いで支持が固まると、このラインに届かない可能性は下がるので、候補者数の影響が大きい仕組みです。
再選挙になるまでの手続きイメージ
当選者がいない場合、法律の規定に基づいて再選挙が行われます。自治体の説明でも、当選者が定まらない場合は再選挙になる流れが示されています。
実務としては、選挙管理委員会が結果を確定し、再選挙の日程を改めて決めて告示します。政治的には緊張感が高まりますが、制度としては「やり直してきちんと選ぶ」ための手順です。
「候補者が多い」と起きやすいのはなぜか
票が分散すると、最多得票でも全体に対する割合が小さくなります。首長選で25%が必要なら、単純に考えて4人以上で支持が割れると到達が難しくなる局面が増えます。
もちろん現実は均等に割れるわけではありませんが、接戦で団子状態だと危険が上がります。つまり法定得票数は「分裂しすぎると決められない」という状況にブレーキをかける役割も持っています。
住民生活への影響と行政の継続
再選挙になると、政治の意思決定が先延ばしになる心配が出ます。ただし自治体の行政は、すぐに止まるわけではなく、事務は継続されます。
一方で首長不在が長引くと、重要案件の判断が難しくなる場面もあります。だからこそ制度としては、再選挙で「代表としての最低限の支持」を満たす人を改めて選ぶことに意味があります。
| 状況 | 起きること | ポイント |
|---|---|---|
| 最多得票が法定得票数以上 | 通常どおり当選者が決まる | 代表性の最低ラインを満たす |
| 最多得票が法定得票数未満 | 当選者がいない扱いになる | 制度上は「選べなかった」状態 |
| 当選者がいない | 再選挙の手続きへ進む | 日程を改めて投票を行う |
再選挙の流れが見えたら、最後に「数字のどこを見ればいいか」をまとめます。ここを押さえると、開票結果を読むときに落ち着いて確認できます。
例として、市長選で有効投票総数が32,000票なら、法定得票数は8,000票です。最多得票が7,900票なら当選者が出ず、後日あらためて投票を行うことになります。
このとき注目したいのは「投票率」より「有効投票総数と最多得票の差」です。あと何票で届いたのかが見えると、なぜ起きたのかが一段わかりやすくなります。
- 届かないと当選者なしになりうる
- 候補者が多いほど票が割れて起きやすい
- 再選挙は制度上の「やり直し」手続き
- 行政は続くが判断が難しくなる場面もある
よくある場面での読み解き方:数字の見方と確認先
ここまで見てきた内容を、日常のニュースの読み方につなげます。法定得票数は式そのものより、「どの数字を材料にするか」を間違えないのがコツです。
開票結果のどの数字を使うのか
開票結果には投票総数、有効投票、無効投票などが並びます。法定得票数の材料は、有効投票総数です。
投票総数を分母にしてしまうと、無効票まで含めてしまい、基準がずれます。ニュースで「有効投票は何票」と出ていたら、その数字を土台にすると覚えておくと、計算の筋道がブレません。
端数や同票など「つまずきポイント」
有効投票総数を定数で割るタイプの選挙では、割り切れないことがあります。このときの端数処理は、実務上のルールに沿って扱われます。
また、得票が同じになる同票もまれに起きます。こうした細部は結果に直結するので、自治体の選挙管理委員会が示す説明や公表資料を確認するのが安全です。
候補者側が事前に把握しておきたいこと
立候補する側は、法定得票数と供託金没収点を別々に把握しておくと安心です。特に没収点は、当落とは別に金銭面の結果が出るため、準備の計画に関わります。
さらに、候補者が多いと法定得票数に届かないリスクが上がるのは先ほど見たとおりです。選挙の構図が読みにくいときほど、「最低ラインを超えるにはどれくらい必要か」を冷静に見積もることが大切になります。
有権者が知っておくと役立つ視点
有権者の立場でも、法定得票数を知っておくと「なぜ当選者がいないのか」を理解しやすくなります。制度のせいで混乱しているように見えても、実は数字の条件が満たされていないだけの場合があります。
また、再選挙になったときは「前回の有効投票総数」と「25%(首長選)」などの基準を思い出すと、状況を自分の頭で整理できます。制度を知ることは、結果を受け止めるときの助けにもなります。
定数がある選挙は「割ってから割合」
迷ったら選挙管理委員会の公表資料を確認
最後に、この記事の要点をQ&A形式で軽くおさらいし、まとめに進みます。数字のルールは難しく見えても、材料と式の形が分かれば追いやすくなります。
Q:法定得票数は投票率と同じですか? A:違います。投票率は投票に行った割合で、法定得票数は有効投票総数を土台にした当選条件です。
Q:どこに確認すればよいですか? A:自治体の選挙管理委員会が出す説明や開票結果の公表資料が、いちばん確実な確認先になります。
- 材料は有効投票総数だと覚える
- 定数がある場合は割り算が先に入る
- 端数や同票は実務ルールで処理される
- 疑問が出たら公表資料で確認する
まとめ
法定得票数は、当選者として認めるための最低ラインです。最多得票でも、選挙の種類ごとに決まる基準に届かなければ、当選者がいない扱いになることがあります。
計算は、有効投票総数を材料にするのが基本で、衆院小選挙区は6分の1、首長選は4分の1といった形が目安になります。定数がある選挙では、いったん定数で割ってから割合を取るのがポイントです。
また、供託金没収点は当選条件ではなく、供託金が戻るかどうかの線です。似た言葉でも目的が違うので、ニュースは分けて読むと理解が楽になります。

