参議院の選挙区はなぜ45?|制度のしくみと合区の背景をやさしく解説

参議院選挙区45を見つめる男性 政治制度と法律の仕組み

参議院の選挙区は「45」とされていますが、その数にどのような理由があるのでしょうか。ニュースなどで「合区(ごうく)」や「1票の格差」という言葉を耳にしても、仕組みや経緯まではわかりにくいと感じる方も多いはずです。

この記事では、参議院の選挙区が45になった背景を中心に、制度の基本構造や選挙区ごとの特徴、一票の重みをめぐる議論までをやさしく解説します。国会での改正や最高裁の判断など、実際に制度がどのように変化してきたのかも整理しました。

複雑に見える選挙制度も、仕組みを理解すればニュースの見え方が変わります。政治の専門知識がなくても「なぜ今の制度なのか」をすっきり理解できるよう、順を追って説明していきます。

参議院の選挙区が45なのはなぜ?制度の基本をわかりやすく解説

まず、参議院選挙区の数が「45」である理由を理解するためには、制度の基本構造から見ていく必要があります。参議院の選挙は、全国をいくつかの選挙区に分けて行われ、それぞれの地域から代表を選ぶ仕組みになっています。

参議院選挙区制度のしくみと特徴

参議院選挙では「選挙区制」と「比例代表制」という2つの仕組みが組み合わされています。選挙区制では都道府県を単位に代表を選び、比例代表制では全国単位で政党を選びます。この2本立ての制度によって、地域の代表と全国的な視点の両立を図ることが目的です。

また、参議院は3年ごとに半数を改選するため、1回の選挙で全議席が入れ替わる衆議院とは異なり、継続性が保たれるのが特徴です。そのため、長期的な政策判断や安定した政治運営が期待されています。

選挙区数が45となった背景と理由

もともと参議院の選挙区は47都道府県と同じ数でした。しかし、人口の少ない県と多い県で「1票の重み」に差が生じ、憲法の「法の下の平等」に反するとの指摘が相次ぎました。このため、最高裁の判決を受けて区割りの見直しが行われ、現在は「合区」により45選挙区となっています。

つまり、単に数を減らしたのではなく、人口バランスを是正するために2県を1つにまとめた結果として、45になったというわけです。

1票の格差問題と合区の関係

「1票の格差」とは、人口の多い選挙区と少ない選挙区で、1票の価値が大きく異なってしまう問題を指します。例えば人口が少ない県では、1人の票が大きな影響力を持つ一方、都市部では多数の票が集まっても議員数が比例しません。これを是正するため、鳥取県と島根県、高知県と徳島県などを一つにまとめた「合区」が導入されました。

合区の実施によって一票の重みの差は縮まりましたが、地元代表を失うことへの反発も起こりました。政治的には「平等」と「地域代表」のどちらを重視するかという難しい課題が残っています。

過去の制度改正と現在の区割りの違い

参議院の選挙制度は、戦後から現在までに何度も見直されています。1994年には比例代表制の導入方法が変更され、2015年と2022年には合区の導入や議員定数の調整が行われました。特に2022年の改正では、人口の動向を踏まえた定数増減が実施され、現在の45選挙区体制が確立しています。

つまり、選挙区の数は政治的判断や人口分布の変化によって柔軟に変わってきたのです。

ポイント: 現在の45選挙区は「人口格差の是正」を目的に生まれた制度改正の結果であり、都道府県数と一致しないのはそのためです。

具体例: 例えば、鳥取県と島根県を1つにまとめた「鳥取・島根選挙区」では、2県で合計2人の議員を選びます。人口が少ない地方でも代表を確保しつつ、票の価値の不平等をできるだけ小さくする工夫といえます。

  • 参議院選挙は都道府県単位で行われる
  • 現在の選挙区数は合区の導入で47→45に変更
  • 背景には1票の格差是正と憲法判断がある
  • 地域代表と平等の両立が制度設計の課題

現在の参議院選挙区と議員定数の内訳

次に、現在の参議院選挙区がどのように構成されているのかを見ていきましょう。2025年時点では、45選挙区において、合計148名の議員が選挙区から選出されます。ここでは、各都道府県の定数や人口との関係を整理します。

2025年時点の選挙区ごとの定数

2025年の通常選挙では、東京都が6人、北海道・愛知・大阪・福岡がそれぞれ4人、鳥取・島根などの小規模選挙区は2人が選ばれる予定です。このように、人口規模に応じて定数が設定されており、都市部ほど議員数が多くなります。

なお、改正公職選挙法によって、今後も人口変動に合わせた見直しが行われる見込みです。

都道府県別の議員数のバランス

都道府県別に見ると、最も議員数が多いのは東京、次いで神奈川・大阪・愛知などの大都市圏です。一方、人口の少ない地方は2議席が基本で、合区によって選挙区を共有する形が続いています。こうした配分は「地域代表」と「人口比例」のバランスを取るための結果といえます。

合区の具体的な対象と影響

現在の合区は「鳥取・島根」と「徳島・高知」の2組です。これらの地域では、2県合同で候補者を選び、議席を分け合う仕組みとなっています。そのため、地域ごとの声が届きにくいという懸念があり、地方議会や有権者からは制度見直しを求める声も上がっています。

比例代表制との違いを整理

比例代表制では、政党が得票数に応じて議席を配分されます。一方、選挙区制では候補者個人への投票によって議員が決まります。この2つを組み合わせることで、地域と全国の意見を反映しやすくしていますが、実際には大都市の影響力が強まりやすい傾向もあります。

ポイント: 45選挙区の中で、定数は人口や地域の事情を考慮して設定されており、合区は一時的な措置として位置づけられています。

具体例: 東京では人口が多いため6人を選出しますが、合区地域の鳥取・島根では2人のみです。この差が「人口比例の原則」に基づく調整の結果であり、都市と地方のバランスを取る工夫となっています。

  • 2025年時点で参議院の選挙区は45
  • 議員定数は人口に応じて配分される
  • 合区は格差是正のための措置として導入
  • 比例代表制と選挙区制が併用されている

参議院選挙における候補者と政党の動き

次に、参議院選挙に出馬する候補者や政党の動きについて見ていきましょう。選挙制度が複雑なため、候補者の戦略や政党の対応にも特徴が表れます。

候補者の選び方と立候補の条件

参議院議員に立候補するには、日本国籍を持ち、満30歳以上であることが条件です。衆議院と比べて年齢要件が高いのは、より経験や見識を重視するためとされています。立候補には選挙区と比例代表の2つの方法があり、選挙区では地域密着型、比例では政党中心の戦いとなります。

候補者は選挙管理委員会に届け出を行い、一定の供託金を納める必要があります。落選した場合は供託金が没収されるため、実質的には一定の覚悟が求められる制度です。

政党ごとの戦略と候補者擁立の傾向

各政党は、選挙区の特性や過去の得票データをもとに候補者を配置します。都市部では知名度の高い候補、地方では地元密着型の候補が選ばれる傾向にあります。また、比例代表では政策テーマや専門分野に強い人材を登用し、政党全体のイメージアップを狙うケースも見られます。

一方で、合区によって候補者調整が難しくなり、2県の支持者をどうまとめるかが課題となっています。

若手・女性候補が増えている理由

近年、若手や女性の立候補者が増加しています。その背景には、有権者の多様化とSNSによる発信力の拡大があります。特に20〜30代の候補者は、オンラインを活用して政策を伝え、若年層の共感を得る動きが目立っています。

また、各政党が「多様性」や「ジェンダー平等」を掲げ、女性候補の割合を高めようとしていることも大きな要因です。

無所属候補の特徴と課題

無所属候補は政党に属さない分、自由な主張ができますが、資金や組織力の面では不利です。そのため、地域活動を通じて地元に根差した信頼を築くことが重要になります。SNSを活用した個人発信やクラウドファンディングなど、新しい形の選挙活動も広がりつつあります。

ポイント: 政党所属・無所属を問わず、候補者は地域の課題をどれだけ自分ごととして訴えられるかが鍵となっています。

具体例: 2022年の参院選では、無所属の候補者が地方のインフラ問題をSNSで発信し注目を集めました。従来の街頭演説に加え、ネットを活用した選挙戦が主流になりつつあります。

  • 候補者は30歳以上・日本国籍が条件
  • 政党は地域特性に合わせて候補を配置
  • 若手や女性の立候補が増加傾向
  • 無所属候補は発信力が重要な要素

投票の仕組みと議席配分の方法

参議院選挙区が45区となった理由を解説する制度図解

参議院選挙では、投票方法も特徴的です。1人が2枚の投票用紙を使い、1枚目は「選挙区候補者」、2枚目は「比例代表の政党」に投票します。この二重構造が、制度を少し分かりにくくしている原因でもあります。

選挙区制と比例代表制の違い

選挙区制は、地域ごとに代表者を選ぶ方式です。比例代表制は、全国の得票率に応じて各政党に議席を配分します。これにより、大政党だけでなく中小政党にも議席獲得のチャンスが生まれ、政治の多様性を確保する狙いがあります。

一方で、比例代表制では個人ではなく政党が中心になるため、候補者の顔が見えにくいという課題もあります。

ドント方式による議席配分の計算

比例代表制の議席数は「ドント方式」と呼ばれる方法で計算されます。各政党の得票数を1、2、3…と割り算し、得られた数値の上位から順に議席を配分する仕組みです。例えば、政党Aが100万票、政党Bが50万票なら、AはBの約2倍の議席を得ます。

この方式は単純で公平性が高いとされますが、大政党がやや有利になる傾向があります。

投票率の推移と低下の要因

参議院選挙の投票率は、かつては70%近くありましたが、近年は50%前後に低下しています。その理由として、政治への関心の薄れや候補者・政策の分かりづらさが挙げられます。特に若年層の参加率が低く、世代間の政治的格差が広がる要因となっています。

一方で、期日前投票やネットでの情報発信が普及し、徐々に参加しやすい環境は整いつつあります。

票の価値を守るための取り組み

選挙管理委員会や自治体は、投票所のバリアフリー化や啓発活動を通じて投票率の向上を図っています。また、若者への政治教育も進められています。学校での模擬投票やSNSキャンペーンなど、身近に政治を感じてもらう取り組みも増えています。

こうした動きは、民主主義の基盤を支えるために欠かせないものです。

ポイント: 投票制度は「公平性」と「参加しやすさ」の両立を目指しており、ドント方式や啓発活動がその要となっています。

具体例: 2022年の参院選では、若年層の投票率を上げるため、大学キャンパス内に臨時投票所を設ける試みが行われました。これにより、20代の投票率が前回比で数ポイント上昇しています。

  • 投票は選挙区と比例代表の2票制
  • 比例代表の配分はドント方式を採用
  • 投票率は低下傾向にあるが改善の兆し
  • 参加しやすい環境整備が各地で進む

参議院選挙区制度が抱える課題

ここでは、参議院の選挙区制度が直面している課題を整理します。制度の公平性や地域代表の在り方など、現在も議論が続く重要なテーマです。

地方と都市の人口差と代表の不均衡

日本では地方の人口減少と都市部への集中が進んでおり、選挙区の人口差が拡大しています。その結果、都市部では多くの有権者が1議席を争う一方、地方では少ない票で当選できるという不均衡が生じます。これが「1票の格差」として問題視されてきました。

人口構造の変化に応じて区割りを見直すことが求められていますが、地域の代表を確保する観点との両立が難しいのが現状です。

「合区」の是非をめぐる議論

合区は一票の格差を是正する手段として導入されましたが、地元の声が届きにくくなるという副作用もあります。特に、鳥取・島根や徳島・高知のように文化・経済圏が異なる地域を一つにまとめたことで、「地元の代表がいない」と感じる有権者も増えました。

一方で、合区を解消すれば再び格差が広がる可能性もあり、代替策の検討が進められています。

憲法上の問題と最高裁の判断

最高裁判所は、選挙区ごとの格差が大きい場合に「違憲状態」と判断することがあります。これまで何度かその指摘を受け、国会は定数調整や区割り改正を行ってきました。ただし、完全な平等を実現することは難しく、あくまで「許容範囲内」に収める努力が続いています。

この問題は、政治の根幹に関わる「国民代表のあり方」を問うテーマでもあります。

制度改革に向けた国会での動き

国会では、合区を見直すための法改正案や、新たな定数調整の議論が進められています。また、比例代表の活用を広げることで地域代表の偏りを補う案も検討されています。いずれにしても、人口変動が続く中で柔軟に対応できる制度設計が求められています。

ポイント: 合区は「一票の格差」を縮める効果がある一方で、地域代表の不在という課題を生んでおり、今後の見直しが重要な焦点です。

具体例: 参議院では2022年に定数を6増やし、合区による影響を一部緩和しました。これは人口の多い都道府県の議席を増やし、全体のバランスを保つための措置です。

  • 地方と都市で票の価値に差がある
  • 合区により地域代表が失われる懸念
  • 最高裁の判断が制度見直しの契機に
  • 国会では新たな制度改革の議論が進行中

今後の展望と市民ができること

最後に、参議院選挙制度の今後と、私たち一人ひとりができることを考えてみましょう。制度の理解を深め、政治への関心を持つことが、より公正な社会を支える第一歩です。

選挙制度改革の方向性

今後の改革では、人口変動への機動的対応と地域代表の確保を両立させることが鍵になります。たとえば「ブロック制」の導入や、人口比に応じた議席の定期見直しが検討されています。これにより、格差是正をより継続的に進める仕組みづくりが期待されています。

ただし、制度を変更するには与野党の合意が必要であり、政治的な調整が避けられません。

SNS時代の政治参加と情報発信

SNSが普及した現代では、候補者や政党の情報が手軽に得られるようになりました。市民も意見を共有したり、政治家に直接意見を届けたりすることが容易になっています。こうした環境は、政治参加のハードルを下げる大きなチャンスです。

一方で、誤情報の拡散も課題であり、情報の信頼性を確かめるリテラシーが求められます。

一票の重みを理解するための視点

自分の票がどのように政治に反映されるのかを知ることは、民主主義を支えるうえで非常に大切です。選挙制度の仕組みを理解すれば、「1票の格差」がどのような意味を持つかが実感できます。人口が少ない地域でも、政策に影響を与える力があることを意識することが重要です。

政治への関心を高める具体的な方法

まず、信頼できる公的情報源を確認し、ニュースを自分の生活に引き寄せて考えることが大切です。さらに、家族や友人と政治について話すことも、関心を広げる第一歩になります。SNSで政策を調べたり、選挙公報を読むことも効果的です。

ポイント: 制度を変える力は一人ひとりの関心から生まれます。政治を「遠いもの」ではなく「自分ごと」として捉えることが重要です。

具体例: 総務省や参議院の公式サイトでは、選挙制度の解説や過去のデータが公開されています。こうした情報をもとに選挙を理解することで、より正確な判断ができるようになります。

  • 制度改革は人口変動と地域代表の両立が課題
  • SNSは政治参加を促進する新たなツール
  • 一票の重みを理解することが民主主義の基盤
  • 日常の関心が社会を変える力につながる

まとめ

参議院の選挙区が45であるのは、単なる数の調整ではなく「一票の格差」を是正するための制度改正の結果です。人口の少ない地域と多い地域のバランスを取るために、合区が導入されましたが、地域代表の減少という課題も残っています。

このように、選挙制度は社会の変化に応じて見直される仕組みです。制度の背景や目的を理解すれば、ニュースで取り上げられる「選挙区の見直し」や「格差問題」の意味がより深く理解できます。私たち一人ひとりが関心を持つことが、より公平で持続可能な民主主義を支える力になります。

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