18歳選挙権と高校生の投票・選挙運動|知っておきたい制度の基本

18歳選挙権と投票を学ぶ日本人男性高校生 政治制度と法律の仕組み

2016年以降、高校生であっても18歳を迎えた時点で選挙権を持つことになりました。この変化は、若い世代の政治参加という観点から日本の選挙制度に大きな転換をもたらしたものです。制度の概要と、高校生が実際に投票や選挙運動に関わる際に知っておくべきポイントを整理します。

18歳選挙権は、2015年6月の公職選挙法改正によって実現しました。それまで「20歳以上」とされてきた選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられ、2016年6月19日に施行されました。高校在学中であっても、18歳の誕生日を迎えた生徒は有権者となります。

本記事では、制度の背景から投票の手続き、選挙運動のルール、そして主権者教育の現状まで、一連の流れを整理します。高校生本人だけでなく、周囲の方も参考にしてください。

18歳選挙権が生まれた背景と法的根拠

選挙権年齢の引き下げは、長年の議論を経て2015年に実現しました。公職選挙法のどの条文が根拠になり、どのような経緯で成立したかを理解しておくと、制度全体の見通しが立ちやすくなります。

改正公職選挙法の成立経緯

改正公職選挙法は、2015年(平成27年)6月17日に参議院本会議で全会一致により可決・成立しました。公布は同年6月19日、施行は2016年(平成28年)6月19日です。

この改正は、2007年の国民投票法(日本国憲法の改正手続に関する法律)で憲法改正の投票年齢が「18歳以上」と定められたことを受け、選挙権年齢との整合を図る形で議論が進みました。e-Gov法令検索では、改正後の公職選挙法第9条第1項において「日本国民で年齢満18年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する」と規定されています。

選挙権年齢の引き下げは、1945年(昭和20年)に「25歳以上」から「20歳以上」に変更されて以来、70年ぶりの大幅な変更となりました。

改正によって新たに有権者となった人数

改正により、18歳と19歳の未成年者約240万人が新たに有権者となりました。有権者全体に占める割合は約2%とされています。

最高裁判所裁判官国民審査の投票資格も同様に「18歳以上」に引き下げられています。年齢要件の変更は選挙権にとどまらず、国民の政治参加に関わる複数の制度に連動していることが分かります。

被選挙権の年齢との違い

選挙権(投票する権利)と被選挙権(立候補する権利)は、法律上、年齢要件が異なります。被選挙権は、衆議院議員・都道府県議会議員・市区町村議会議員・市区町村長については25歳以上、参議院議員・都道府県知事については30歳以上と定められています。

18歳になれば投票はできますが、国会議員や知事への立候補には別の年齢要件があります。この点は混同されやすいため、区別して理解しておくとよいでしょう。

18歳以上:選挙権あり(投票できる)
25歳以上:衆議院議員・地方議会議員・市区町村長の被選挙権
30歳以上:参議院議員・都道府県知事の被選挙権
※被選挙権の年齢は公職選挙法第10条に規定
  • 改正公職選挙法は2016年6月19日に施行された
  • 公職選挙法第9条第1項が選挙権年齢の法的根拠になる
  • 選挙権と被選挙権は年齢要件が異なる
  • 被選挙権は25歳以上または30歳以上が条件

高校生が投票するための具体的な条件と手続き

18歳を迎えた高校生が実際に投票するには、いくつかの条件と手続きが必要です。条件を事前に整理しておくと、選挙当日に戸惑わずに済みます。

選挙人名簿への登録要件

投票するには、選挙人名簿に登録されていることが必要です。e-Gov法令検索の公職選挙法第21条によれば、登録の基本要件は「年齢満18年以上の日本国民で、引き続き3か月以上その市区町村の住民基本台帳に記録されていること」とされています。

選挙人名簿への登録は、市区町村の選挙管理委員会が定期的に行います。条件を満たしていれば、申請しなくても自動的に登録されます。入場整理券が届いていなくても、名簿に登録されていれば投票所で投票できます。

親元を離れて暮らす高校生の対応

寄宿舎や下宿などで親元から離れて生活している場合、住民票を移していないと住所地の投票所では投票できません。この場合、住民票のある市区町村の投票所に出向くか、不在者投票の手続きをとる必要があります。

不在者投票とは、選挙期日前に都道府県選挙管理委員会が指定した施設などで投票できる制度です。現在滞在している市区町村の選挙管理委員会に申請し、必要書類を取り寄せることで手続きができます。

年齢の数え方と選挙期日の関係

「満18歳」の計算には注意が必要です。年齢計算ニ関スル法律および民法第143条の規定により、誕生日の前日に年齢が加算されます。たとえば、投票日の翌日が18歳の誕生日である場合、その人は投票日当日に満18歳となるため、投票できます。

期日前投票については、選挙期日に投票できる見込みがあることが原則とされており、誕生日前の期日前投票は原則として認められません。選挙管理委員会の公式資料で詳細な取り扱いを確認しておくとよいでしょう。

項目内容
投票できる年齢満18歳以上の日本国民
名簿登録の条件同一市区町村に3か月以上の住民登録
住民票が別にある場合住民票所在地の投票所または不在者投票を利用
年齢の起算日誕生日の前日に年齢が加算される(法律上の規定)
  • 選挙人名簿への登録には3か月以上の住民登録が必要
  • 住民票と居住地が異なる場合は不在者投票を検討する
  • 年齢の起算は誕生日の前日となる法律上の規定がある

高校生の選挙運動と政治活動のルール

18歳以上の高校生は選挙運動に参加できますが、18歳未満の高校生は全面的に禁止されています。また学校の内外で適用されるルールが異なるため、具体的な行為がどちらに当たるかを整理しておくことが大切です。

18歳以上と18歳未満の違い

公職選挙法第137条の2は、「年齢満18年未満の者は、選挙運動をすることができない」と明記しています。18歳未満の高校生は、選挙運動期間中であっても、投票依頼・街頭活動・SNSでの投票呼びかけなど、あらゆる選挙運動が禁止されます。

18歳以上の場合は、成人と同じ選挙運動のルールが適用されます。選挙運動期間中に限り、SNSや街頭での活動が認められています。重要なのは「高校生かどうか」ではなく「実際の年齢が18歳以上かどうか」という点です。

選挙運動と政治活動の区別

18歳選挙権と投票制度を確認する資料

選挙運動と政治活動は法律上異なります。選挙運動とは「特定の選挙において、特定の候補者または特定の政党の当選を目的として投票を呼びかける行為」を指します。政治活動は、特定の選挙と結びつかない政策への意見表明や署名活動などを含む、より広い概念です。

18歳未満であっても、政治に関心を持ち、政策について意見を述べること自体は法律で禁止されているわけではありません。ただし選挙運動期間中に特定候補への投票を呼びかける行為は、年齢を問わずルールに従う必要があります。

学校内での政治活動に関する文部科学省の方針

文部科学省は2015年、「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について」と題した通知を発出しています。この通知では、放課後や休日に学校外で行う政治的活動は、基本的に生徒の自由として尊重されるとされています。

一方、学校内での政治的活動については、教育環境への影響を考慮し、学校が適切に指導できるとされています。放課後に校内で行う場合も、学校の秩序を乱すおそれがある場合などは制限の対象になります。

18歳未満:選挙運動は全面禁止(公職選挙法第137条の2)
18歳以上:成人と同じルールで選挙運動に参加できる
学校内の政治活動:文部科学省通知に基づき学校が指導方針を定める
政治活動(政策への意見表明など):選挙運動とは区別される
  • 18歳未満は選挙運動全面禁止、18歳以上は成人と同じルールが適用される
  • 選挙運動と政治活動は法律上の定義が異なる
  • 学校内での扱いは文部科学省の通知が基準になる
  • 重要な判断基準は「高校生かどうか」ではなく「18歳以上かどうか」

18歳・19歳の投票率の現状

18歳選挙権が導入されてから10年近くが経過しました。若者の投票参加がどの程度進んでいるかを数字で確認しておくと、制度の現状と課題が見えてきます。

直近の参院選における10代の投票率

総務省の発表によれば、2025年7月20日に投開票された参議院議員通常選挙における18歳・19歳の投票率(選挙区・抽出調査)は41.74%でした。前回2022年参院選の35.42%から6.32ポイント上昇しています。

ただし、今回の全体投票率58.51%と比較すると、10代の投票率は依然として16.77ポイント低い水準にあります。若者の政治参加は少しずつ進んでいる一方、全世代の平均には届いていないのが現状です。

年代別投票率の推移と10代の位置づけ

総務省が公表している「国政選挙の年代別投票率の推移」によれば、60代・70代前半の投票率が高い傾向にある一方、20代・30代の投票率は全年代の中で低い傾向が続いています。10代の投票率は2016年の参院選初導入時から注目されており、20代を上回る選挙もありました。

年代別の詳細な推移データは、総務省ウェブサイトの「国政選挙の年代別投票率の推移について」ページで確認できます。最新の選挙ごとに更新されているため、最新情報は総務省公式サイトの当該ページをご参照ください。

投票率向上に向けた取り組み

総務省や各選挙管理委員会は、若者の投票率向上に向けたさまざまな啓発活動を行っています。出前授業やモデル投票体験、選挙管理委員会と学校が連携したイベントなどが全国各地で実施されています。

文部科学省も高等学校での主権者教育の充実を推進しており、2023年度の実施状況調査をもとに具体的な取り組み例をまとめた資料を公表しています。最新の取り組み状況は、文部科学省ウェブサイトの主権者教育関連ページで確認できます。

選挙18・19歳の投票率全体の投票率
2016年参院選(初導入)約46%54.70%
2022年参院選35.42%52.05%
2025年参院選41.74%58.51%
  • 2025年参院選の18・19歳投票率は41.74%(前回比6.32ポイント上昇)
  • 全体投票率との差は依然として16ポイント以上ある
  • 総務省・文部科学省が連携した啓発・教育活動が全国で展開されている

高校での主権者教育の内容と位置づけ

18歳選挙権の導入に合わせて、高等学校における主権者教育の充実が求められるようになりました。何をどのように学ぶのか、学校教育との関係を整理します。

主権者教育とは何か

主権者教育とは、単に投票の仕方を教えるだけでなく、民主主義の仕組みや政治参加の意義、多様な意見を尊重しながら合意形成を図る力を育てることを目的とした教育です。文部科学省の方針では、公民科や特別活動を中心に、各教科・領域を横断した実践が推奨されています。

2022年度から実施されている高等学校の新学習指導要領では、公民科に「公共」が必修科目として設けられました。この科目では、民主主義の原理や法の役割、政治・経済の仕組みを体系的に学ぶことが想定されています。

模擬投票や出前授業の実践例

各地の選挙管理委員会が学校に出向いて行う出前授業では、実際の投票箱や記載台を使った模擬投票体験が実施されています。こうした体験型の学習は、投票の手順を事前に把握する機会となります。

また、生徒が自ら課題を設定してグループで議論するプロジェクト型学習や、地域の政策課題を調べてまとめる活動なども各校で取り入れられています。具体的な実践例は、文部科学省が公表している「主権者教育の課題に対応した取組例」資料で確認できます。

学校外での政治的リテラシーの育て方

学校での学びに加え、日常的にニュースや公式発表に触れる習慣が政治への理解を深めます。政府広報オンライン(gov-online.go.jp)では、選挙制度や投票の手続きに関する情報が平易な言葉でまとめられており、制度を確認したい場合の参考になります。

SNSでは選挙に関する誤情報も拡散されることがあるため、総務省や各選挙管理委員会の公式情報と照合する習慣を持つことが大切です。判断の根拠を公的な一次情報に求めることは、主権者として政治に参加する際の基本的な姿勢といえます。

主権者教育の基本:投票の仕方だけでなく、制度の仕組みや合意形成の考え方を学ぶ
高校の必修科目「公共」:2022年度から新学習指導要領で位置づけられた
情報確認の基本:総務省・選挙管理委員会の公式情報を一次情報として参照する
  • 高等学校では2022年度から「公共」が必修科目になった
  • 模擬投票・出前授業など体験型の主権者教育が全国各地で実施されている
  • SNSの情報は公的な一次情報と照合する習慣が重要
  • 詳細な取り組み例は文部科学省の公式ページで確認できる

まとめ

18歳選挙権は、2016年の改正公職選挙法施行により、高校生であっても18歳を迎えた時点で有権者となる制度です。投票の条件、選挙運動のルール、主権者教育の内容まで、それぞれ根拠となる法令や公的な通知があります。

まずは自分の住民票がある市区町村の選挙管理委員会のウェブサイトで、選挙人名簿の登録状況と投票所の場所を確認してみましょう。住民票の所在が実態と異なる場合は、不在者投票の手続きを事前に調べておくことをおすすめします。

制度を正確に理解した上で投票に臨むことが、政治参加の第一歩です。疑問が生じた際は、総務省や各選挙管理委員会の公式情報を一次情報として参照するようにしましょう。

本記事の内容は執筆時点の公的情報をもとに整理したものです。制度・法令・人事等は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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