国民投票法改正に賛成した背景と経緯|投票環境整備からCM規制まで解説

国民投票法改正に賛成する日本人女性 政治制度と法律の仕組み

国民投票法の改正に賛成した政党はどこで、何が賛成を決めた根拠だったのか。ニュースで耳にしながらも、法律の仕組みや審議の経緯まで追いきれなかった方も多いはずです。

2021年6月、「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律」(以下、改正国民投票法)が参院本会議で可決・成立しました。賛成した政党は自民党・公明党・立憲民主党・日本維新の会・国民民主党など複数にわたり、反対したのは共産党などでした。この賛否の構図は、投票環境の整備という内容そのものへの評価と、CM規制をめぐる条件交渉が複雑に絡み合った結果です。

この記事では、国民投票法の基本的な仕組みから改正の内容、各党の賛成・反対の背景、そして残された論点まで、一次情報をもとに順を追って整理します。制度の構造から理解しておくと、今後の憲法論議を読み解く際の確かな土台になります。

国民投票法の仕組みと制定の経緯を確認する

まず、国民投票法がどのような法律で、なぜ制定されたのかを押さえておくと、改正の意味が正確に分かります。

日本国憲法第96条が規定する手続き

日本国憲法の改正には、通常の法律制定よりも厳しい手続きが課されています。第96条は、衆参各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、国民投票において有効投票の過半数の賛成を得る必要があると定めています。

ただし、この条文には「国民投票をどのように実施するか」という具体的な手続きは書かれていません。そのため、投票権者の年齢、投票方法、期間の設定、広報の仕組みなどを法律で整備する必要がありました。この整備を担うのが国民投票法です。

国民投票法の制定と2014年改正

「日本国憲法の改正手続に関する法律(憲法改正国民投票法)」は2007年5月18日に公布され、2010年5月18日から主要規定が施行されました。この法律によって、衆参各院への憲法審査会の設置、憲法改正原案の発議要件(衆議院100人以上・参議院50人以上の賛成)、投票方法などが具体的に定められました。

その後、2014年6月20日に一部改正が公布・施行されています。この改正では、投票権年齢を満20歳以上から満18歳以上に引き下げることなど、附則に規定されていた3つの検討課題への対応が行われました。投票権年齢の実際の適用は、公職選挙法の改正時期に連動する形で整理されています。

国民投票の基本的な流れと成立要件

国民投票の流れは次のとおりです。一定数の国会議員の賛成で憲法改正原案が発議され、衆参各院の憲法審査会で審議のうえ、両院の本会議でそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成で可決されると、国会による発議となります。

発議から60日以後180日以内の国会が議決した期日に国民投票が行われ、賛成の投票が投票総数(賛成票と反対票の合計)の2分の1を超えた場合に憲法改正が成立します。なお、白票などの無効票は投票総数に含まれません。

国民投票法の基本的な数字をまとめると次のとおりです。
・発議要件:衆参各院の総議員の3分の2以上の賛成
・投票権:満18歳以上の日本国民(投票人名簿登録者)
・成立要件:有効投票総数の2分の1超の賛成
・投票期日:発議から60日以後180日以内
  • 国民投票法は憲法第96条の手続き規定を具体化した法律で、2007年に制定されました。
  • 投票権は満18歳以上の日本国民が有し、投票人名簿への登録が必要です。
  • 憲法改正の成立には有効投票総数の2分の1超の賛成が必要です。最低投票率の規定はありません。
  • 2014年改正で年齢要件などの課題が整理され、2021年改正で投票環境がさらに整備されました。

2021年改正の内容と賛成された7つの変更点

2021年の改正は、投票環境の向上を主な目的としており、すでに公職選挙法で実施されていた内容と国民投票の手続きを揃えるものでした。

改正の出発点:公職選挙法との乖離

通常の選挙(国政選挙・地方選挙)では、2016年以降、公職選挙法の改正によって複数の投票環境向上策が導入されました。具体的には、共通投票所の設置や期日前投票時間の柔軟化、洋上投票の対象拡大などです。一方、国民投票の手続きはこれらの改正が反映されないまま残っていました。

この乖離を解消するために、改正案が2018年6月に自民党・公明党・日本維新の会などによる議員立法として提出されました。しかし、CM規制などをめぐる与野党間の意見の相違から審議が進まず、提出から約3年・9国会にわたって継続審議の状態が続きました。

改正の主な内容:7項目の変更

2021年に成立した改正内容は、公職選挙法改正で実施された7項目の選挙ルールを国民投票の手続きにも反映させるものです。主な変更点は次のとおりです。駅や商業施設などに「共通投票所」を設置できるようにし、地域をまたいで投票機会を増やす仕組みが整いました。また、期日前投票の投票時間を柔軟に設定できるようになり、漁船や船員が対象だった洋上投票の範囲も広がりました。

これらはいずれも、すでに通常選挙で実績のある制度であり、改正案を提出した各党はこの点を「投票環境の底上げ」として説明しました。制度の合理性そのものに対して、与野党を問わず大きな反対はありませんでした。

CM規制の取り扱いが最大の焦点になった背景

審議が長期化した主な要因は、CM規制をめぐる与野党の対立です。現行の国民投票法では、テレビ・ラジオの広告放送は投票日前14日間のみ制限されており、それ以前は資金力に応じて広告を大量に投入できる構造になっています。費用制限が存在しないため、資金力の差が投票結果に影響しうるとの懸念が以前から指摘されていました。

立憲民主党はこの点を問題視し、CM規制や外資規制を含むルール整備を改正案の採決と並行して行うよう求め続けました。一方、自民党などは「改正案の採決後にCM規制の議論を行う」という合意が存在するとして、先行採決を求めました。

論点与党(自民・公明)の立場立憲民主党の立場
改正案の採決早期採決を要求CM規制整備が先決
CM規制採決後に別途議論付則明記を条件に賛成
ネット広告規制慎重外資規制含め整備を要求
  • 7項目の改正内容は公職選挙法との整合を図るものです。
  • CM規制を付則に明記することで、立憲民主党が条件付き賛成に転じました。
  • 共通投票所設置など投票環境の向上策については与野党間に実質的な異論はありませんでした。
  • 最低投票率の規定がないことなど、当初から残されている論点もあります。

賛成した政党と各党の立場の根拠を整理する

2021年改正国民投票法に賛成した政党と、それぞれの立場の論拠を確認しておきます。賛否の構図は単純ではなく、修正案への対応によっても異なる点があります。

自民党・公明党の賛成理由

自民党と公明党は、改正案を共同提出した当事者として賛成しました。自民党は、改正によって改憲発議に向けた投票環境が整ったとして、今後は国会に提出する改憲原案策定の議論を本格化させたい考えを示しました。公明党は、改憲そのものには慎重な立場を維持しつつも、投票環境の整備自体は「国会の責任」として賛成しました。

ただし、修正案への賛否では違いがあります。立憲民主党が求めたCM規制検討を付則に盛り込む修正案に対し、自公両党は受け入れ、賛成しました。これは立民の賛成を取り付けるための合意形成の結果です。

立憲民主党の条件付き賛成

立憲民主党は、当初は採決自体に慎重な姿勢をとっていました。CM規制や外資規制などの環境整備が不十分だとして、単純賛成には応じない方針でした。転機となったのは、「法施行後3年をめどに、テレビCM・ネット広告の有料広告の制限、運動資金の規制、ネット利用の適正確保などを検討し、必要な法制上の措置を講ずる」という内容を付則第4条として改正案に追加するよう求め、与党がこれを受け入れたことです。

この修正によって立憲民主党は賛成に転じ、改正原案・修正案の両方に賛成しました。CM規制の議論を将来的に担保することが、賛成の条件でした。

日本維新の会と国民民主党の賛成

日本維新の会は改正案の原案には賛成しましたが、CM規制等を盛り込んだ修正案には賛成しませんでした。同党は教育無償化や統治機構改革などを盛り込んだ改憲論議を主導しており、投票環境整備の早期実現を支持する立場でした。国民民主党も原案・修正案の両方に賛成しました。

共産党は、改正原案・修正案いずれにも反対しました。国民投票法そのものが憲法改正に向けた手続きであるとして、反対の立場を一貫させています。

2021年改正国民投票法の採決結果(参院本会議、2021年6月11日)
賛成:自民・公明・立憲民主・日本維新の会・国民民主など
反対:共産党など
修正案(CM規制付則)の賛成:自民・公明・立憲民主・国民民主
修正案への反対:日本維新の会・共産党など
  • 自公は投票環境整備の必要性を根拠に賛成し、CM規制付則も受け入れました。
  • 立憲民主党はCM規制を将来的に検討する旨の付則明記を条件に、賛成に転じました。
  • 維新は原案には賛成したものの、修正案(CM規制付則)には反対しました。
  • 共産党は法律そのものへの反対から、原案・修正案ともに反対しました。

改正後に残された論点とCM規制の現状

国民投票法改正の賛成意見を示す図解

2021年改正で投票環境は一定程度整えられましたが、付則第4条に盛り込まれた検討事項はその後どうなっているのかも確認しておく必要があります。

付則第4条の「3年をめど」という意味

修正案として追加された付則第4条は、法施行後3年をめどに次の事項を検討し、必要な法制上の措置を講ずるとしています。具体的には、有料広告放送・ネット有料広告の制限、運動資金の規制、ネット利用の適正確保の3点です。2021年9月の施行から起算すると、3年の目途は2024年9月ごろにあたります。

「めどに」という表現は「その時点で措置を完了する義務がある」を意味するものではなく、検討義務を設けたものです。実際には2026年3月時点においても、法整備の動向については衆議院憲法審査会での議論が継続しており、具体的な立法化には至っていません。最新の状況は衆議院の公式ウェブサイトでご確認ください。

CM規制の現状と課題

現行法のままでは、国民投票の運動期間中(投票日前14日を除く期間)は、政党や民間団体が資金力に応じて無制限にテレビ・ラジオのCMを投入できます。日本民間放送連盟(民放連)は自主的な考査ガイドラインを設けてはいますが、法的な拘束力はなく、量的な偏りが生じる可能性は排除されていません。

また、2007年の法制定当時にはテレビ広告費の3分の1程度だったインターネット広告費は、2019年以降テレビを上回る規模に成長しており、ネット上の有料広告への規制をどう設計するかという新たな課題も加わっています。表現の自由との兼ね合いから規制設計が難しいとの指摘も根強くあります。

最低投票率規定をめぐる議論

制定当初から指摘されてきた論点のひとつが、最低投票率の規定がないことです。有権者の参加率が極めて低くても、集まった票の過半数で憲法改正が成立しうる構造になっています。最低投票率を設けるべきという意見がある一方、憲法第96条には「国民の承認」とあり、投票率に条件をつけることが第96条の要件を加重しないかという問題もあります。

この点については、国会各派が異なる立場をもっており、制度上の未解決事項として現在も議論が続いています。

論点現状主な問題意識
CM規制(テレビ・ラジオ)投票日前14日間のみ制限資金力の差が投票結果に影響する懸念
ネット広告規制法的規制なし(民放連の自主基準のみ)広告費のネットシフトで影響が大きくなっている
最低投票率規定なし低投票率でも改正が成立しうる
外資規制規定なし外国資本の政治的影響への懸念
  • 付則第4条で「3年をめど」とされたCM規制等の法整備は、2026年3月時点で具体的な立法化には至っていません。
  • テレビCMより影響力が大きくなったネット広告への対応が新たな課題として浮上しています。
  • 最低投票率の規定がないことは、制定当初から議論されてきた未解決の論点です。
  • 外資規制についても付則第4条に検討事項として明記されています。

国民投票法を理解するために確認しておくべき一次情報

この法律は制度と政治状況が絡み合い、情報が更新されやすいテーマです。正確な理解のために、一次情報の参照先を整理しておきます。

法令の原文を確認する

国民投票法の正式名称は「日本国憲法の改正手続に関する法律」(平成19年法律第51号)です。2021年の改正を含めた現行の条文は、e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/)で「日本国憲法の改正手続」と検索すると確認できます。付則第4条の「検討」規定も法令の原文として収録されています。

条文の解釈や立法趣旨を確認したい場合は、衆議院のウェブサイトで審議録や憲法審査会の議事録を参照するとよいでしょう。施行規則・政令は総務省の国民投票制度のページにリンクがまとめられています。

総務省と政府広報オンラインの解説ページ

総務省は「国民投票制度についての紹介」というページで、法律の概要や改正の経緯をまとめています(https://www.soumu.go.jp/senkyo/kokumin_touhyou/)。投票人名簿への登録方法や洋上投票の手続きといった実務面の情報も掲載されています。政府広報オンライン(https://www.gov-online.go.jp/)でも制度の全体像が分かりやすく整理されています。

いずれのページも制度変更にあわせて更新されるため、制度の細部を確認する際は最新ページをご参照ください。

憲法審査会の審議状況を追う

CM規制の法整備やネット広告規制の議論は、衆議院憲法審査会および参議院憲法審査会で継続して行われています。審議状況は衆議院ウェブサイト(https://www.shugiin.go.jp/)の「憲法審査会」欄から議事録・配布資料を参照できます。

報道では断片的な情報しか伝わらないことも多く、論点の全体像を把握したい場合は審査会の資料を直接確認するとよいでしょう。最新の国会会期での議論状況も同ページで確認できます。

確認先まとめ:法令原文はe-Gov法令検索、制度概要は総務省の国民投票制度ページ、審議状況は衆議院・参議院の憲法審査会ページ、政府の公式解説は政府広報オンライン。
制度は改正されることがあるため、数値や規定の詳細は必ず上記の一次情報でご確認ください。
  • 法令の原文はe-Gov法令検索で「日本国憲法の改正手続」と入力すると閲覧できます。
  • 制度概要は総務省の国民投票制度ページが分かりやすくまとめられています。
  • CM規制・ネット広告規制の最新動向は衆参憲法審査会の議事録で確認できます。
  • 政府広報オンラインでは投票の流れを図解したページが公開されています。

まとめ

国民投票法改正に賛成したのは、自民・公明・立憲民主・日本維新の会・国民民主など複数の政党です。賛成の背景には、通常選挙と手続きを揃えるという制度的合理性への同意と、立憲民主党がCM規制の将来的検討を付則に明記することを条件に交渉して賛成に転じた経緯があります。法の内容そのものへの賛否と、付則に関する各党の立場はそれぞれ異なります。

まず取り組むとよいのは、総務省の「国民投票制度についての紹介」ページ(https://www.soumu.go.jp/senkyo/kokumin_touhyou/)で制度の概要を確認し、続けてe-Gov法令検索で付則第4条の原文を読んでみることです。CM規制の検討がどこまで進んでいるかは、衆議院憲法審査会の最新の議事録で確認できます。

制度の仕組みを一度整理しておくと、これからの憲法審査会の議論や改憲に関するニュースがずっと読みやすくなります。判断の土台として、ぜひ一次情報に当たってみてください。

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