定額減税は、いつの所得を基準に税金が軽くなるのかが少しややこしい制度です。給与明細で所得税が減った人もいれば、住民税の通知を見て「去年の所得が関係するの?」と戸惑った人もいるかもしれません。
ポイントは、所得税と住民税で「見ている年度」が違うことです。所得税はその年(2024年)の所得にかかる税金ですが、住民税は原則として前年の所得をもとに翌年度の税額が決まります。
この記事では、定額減税が「いつの所得」にひもづくのかを、会社員・個人事業主・年金受給者などの場面に分けて整理します。最後に、明細や通知での確かめ方もまとめます。
定額減税いつの所得をまず整理:所得税と住民税で「年度」が違う
まずは結論から押さえると、所得税と住民税で“対象の年度”がズレます。ここを先にほどくと、明細や通知の見え方が一気にわかりやすくなります。
結論から:所得税は2024年分、住民税は2024年度分
定額減税は、所得税と住民税の両方にあります。ただし、所得税は「2024年分(令和6年分)」の所得税額から控除されます。いっぽう住民税は「2024年度分(令和6年度分)」の住民税(所得割)から控除されます。
ここで大事なのは、同じ“2024”でも意味が違う点です。所得税の2024年分は、2024年1月から12月の所得をまとめて精算するイメージです。住民税の2024年度分は、基本的に前年の所得をもとに翌年度の税額を決める仕組みの中で控除されます。
なぜズレるのか:所得税は「その年の所得」、住民税は「前年の所得」
ズレの理由は、それぞれの税金の設計が違うからです。所得税は、毎月の源泉徴収でいったん仮計算し、年末調整や確定申告でその年の税額を確定させます。つまり「その年の所得」を追いかける税金です。
一方で住民税(個人住民税)は、前年の所得をもとに翌年度の税額が決まります。2024年度分の住民税は、原則として2023年の所得情報をもとに計算され、そこから定額減税の控除が入ります。ここを知らないと「いつの所得の話?」と混乱しがちです。
いつ実感するか:給与・年金・確定申告で見え方が変わる
実感のタイミングも人によって違います。会社員なら、所得税は2024年6月以降の給与で源泉徴収額が下がり、手取りが増えたように見えます。住民税は、給与天引きなら通常6月に切り替わるため、通知書や天引き額の動きで気づくことが多いです。
個人事業主は、給与明細がないぶん、確定申告や納付の場面で反映を確認します。年金受給者も、年金から天引きされる税(所得税・住民税)にどう出るかで見え方が変わります。まずは「どこで減税を受けるか」を意識すると整理しやすくなります。
| 区分 | 対象 | 基準になる所得の年 | 反映が見えやすい場面 |
|---|---|---|---|
| 所得税 | 2024年分(令和6年分) | 2024年の所得 | 給与(6月以降)、年末調整、確定申告 |
| 住民税 | 2024年度分(令和6年度分)の所得割 | 原則2023年の所得 | 住民税決定通知書、給与天引き(6月以降の月割り) |
この表の「基準になる所得の年」が、今回のいちばんの混乱ポイントです。次からは、所得税と住民税を分けてもう少し具体的に見ていきます。
具体例:会社員で2024年6月の給与明細を見たら所得税が減っていたのに、住民税は「2024年度」と書かれていて戸惑うことがあります。これは、所得税は2024年の所得に対してその場で控除が進み、住民税は前年の所得をもとに計算された2024年度税額から控除されるためです。
- 所得税は2024年分、住民税は2024年度分が対象
- 住民税は原則「前年所得」で税額が決まる
- どこで反映されるか(給与・通知・申告)を先に決めて見る
所得税の定額減税:2024年分の所得にどう反映される?
ここまでの整理を踏まえると、所得税側は「2024年の所得税を軽くする仕組み」と考えるとつかみやすいです。特に会社員は、給与の源泉徴収で早めに実感しやすいのが特徴です。
会社員はいつから:2024年6月以降の源泉徴収で順次控除
給与所得者の所得税の定額減税は、原則として2024年6月1日以後に支払われる給与などの源泉徴収税額から控除される形で進みます。つまり、給与明細の所得税欄が6月以降に下がることで「減税された」と感じやすくなります。
ただし、控除は一度で終わるとは限りません。月々の源泉徴収税額が少ない人は、数か月に分けて控除されます。逆に源泉徴収税額が多い人は、比較的早い段階で控除し切ることもあります。明細を見て「ゼロになった月がある」場合も、制度上は珍しくありません。
年末調整と確定申告:不足やズレを最後に精算する
毎月の源泉徴収はあくまで仮計算なので、年末調整でその年の税額を確定させます。定額減税も同様で、月々で控除し切れなかった分や、扶養状況の変更などで生じたズレは、年末調整や確定申告の場面で精算されます。
例えば、途中で転職した人や、副業で年末調整だけでは完結しない人は、確定申告で最終的な税額を決めます。ここで「2024年分の所得税」が確定し、その結果として定額減税がどう効いたかがはっきりします。月々の明細だけで判断しすぎないのがコツです。
扶養や配偶者の分:人数カウントの考え方を押さえる
所得税の定額減税は、本人分に加えて、同一生計配偶者や扶養親族の人数が関係します。ただ、人数の数え方にはルールがあります。例えば、配偶者でも一定の所得を超えると対象に入らないなど、いわゆる扶養判定と同じ発想がベースになります。
ここでつまずきやすいのが「申告書に書いていない家族がいる」ケースです。会社員の場合、扶養控除等申告書の記載や別の申告書で、会社に届け出ることで人数に反映されます。つまり、制度自体は“家族構成で増える”のですが、手続き上は「会社が把握しているか」が影響します。
・対象は2024年分の所得税
・給与なら2024年6月以降の源泉徴収で順次控除
・最後は年末調整や確定申告で精算される
給与明細で増減が見えても、年末に最終形が整う仕組みだと覚えておくと安心です。
ミニQ&A:Q:6月より前の給与にも、後からさかのぼって反映されますか。A:原則は6月以後に支払われる給与の源泉徴収で順次控除され、過去分の給与明細が書き換わる形ではありません。
ミニQ&A:Q:年末調整で損をしないために何を見ますか。A:扶養や配偶者の情報が会社に正しく届いているか、源泉徴収票で控除状況が合っているかを確認するとズレに気づきやすいです。
- 所得税は2024年分の税額から控除される
- 給与所得者は6月以降の源泉徴収で順次反映される
- 年末調整・確定申告で最終的に精算される
住民税の定額減税:2024年度の所得割が対象、基準は前年所得
所得税の話が見えたところで、次は住民税です。住民税は「前年所得で翌年度が決まる」ため、同じ定額減税でも考え方が一段違って見えます。
対象は「所得割」:非課税や均等割のみは原則対象外
住民税の定額減税は、住民税のうち「所得割(しょとくわり)」と呼ばれる部分が対象です。住民税には、所得に応じて増える所得割と、一定額を負担する均等割がありますが、定額減税は主に所得割から控除されます。
そのため、そもそも住民税が非課税の人や、均等割のみ課税される人は、原則として住民税の定額減税の対象になりません。自治体の案内でも、所得割が課税になっているかどうかが入口として示されています。まずは「所得割があるか」を通知書で確認するのが早道です。
いつの所得で判定:2023年分(前年)の合計所得金額がカギ
住民税でいちばん誤解されやすいのが「いつの所得で対象者を判定するか」です。住民税の2024年度分は、原則として2023年の所得情報をもとに決まります。したがって、定額減税の対象かどうかも、前年(2023年分)の合計所得金額などで判定されます。
例えば、2024年に収入が大きく増えたとしても、住民税の2024年度分そのものは前年所得で決まっているため、2024年の増減は主に次年度の住民税に影響します。ここを理解すると「今年の収入の話なのに、なぜ去年?」というモヤモヤがほどけます。
給与天引きはこう動く:6月は徴収なし、7月以降で調整
給与天引き(特別徴収)の住民税は、通常6月から翌年5月までの12か月で天引きされます。定額減税が入る年は、自治体が控除を織り込んだうえで月割りを組み直します。実際の運用として「6月分は徴収しない」など、月ごとの動きが普段と変わることがあります。
この動きは、会社が勝手に決めているわけではなく、自治体から届く税額通知にもとづいて処理されます。したがって、住民税側は給与明細だけでなく、自治体の通知書の記載とセットで見ると安心です。通知書の「特別税額控除」などの表記が手がかりになります。
・対象は2024年度分の住民税(所得割)
・基準は原則として前年(2023年)の所得
・天引きは自治体通知にもとづき月割りが調整される
所得税よりも「通知書を見る意味」が大きいのが、住民税の特徴です。
具体例:2024年に転職して年収が変わった人でも、2024年度の住民税は主に2023年の所得で決まっています。通知書の所得割が課税になっていて、そこから1万円分(人数分)が控除される形になります。年収の変化は、主に翌年度の住民税で効いてきます。
- 住民税の定額減税は所得割が対象
- 判定は原則として前年(2023年)の所得情報で行う
- 給与天引きは自治体の通知書と合わせて確認する
対象者の条件を具体化:合計所得金額と「対象外」になりやすい落とし穴
所得税・住民税の年度差がわかったら、次に気になるのは「自分は対象か」です。ここでは条件を生活者目線でほどき、つまずきやすい点を先回りして整理します。
上限の見方:合計所得金額1,805万円の意味
定額減税には所得制限があり、合計所得金額が一定額を超えると対象外になります。目安としてよく出てくるのが「1,805万円」という数字です。これは給与収入そのものではなく、所得控除などを考慮した“所得の合計”で判定する点がポイントです。
給与収入だけの人は、別の目安として「給与収入2,000万円以下」などと案内されることがあります。ただ、実際の判定は個々の控除や所得の種類で変わるため、最終的には源泉徴収票や確定申告書に出てくる「合計所得金額」を確認するのが確実です。
同一生計配偶者・扶養親族:誰がカウントされる?
人数分の控除がある一方で、カウント対象は無制限ではありません。所得税では同一生計配偶者や扶養親族、住民税では控除対象配偶者や扶養親族など、税目ごとに言い方が少し違います。ここで大切なのは「同じ家計で生活しているか」「一定の所得以下か」という考え方です。
例えば、配偶者がパートで働いていても、所得が一定以下なら人数に入ります。一方で、家族でも国外に住んでいる場合は対象から外れることがあります。制度の根っこは「日本国内で生活している家計の負担を軽くする」趣旨なので、住所や居住の扱いが影響するイメージです。
対象外になりやすい例:住所、国外扶養、所得割が小さい場合
対象外になりやすいのは、所得が高い人だけではありません。住民税側では、所得割が発生していない(非課税)場合や、均等割のみ課税の場合は対象外になりやすいです。また、所得割があっても税額が小さいと、控除し切れないことがあります。
もう一つの注意点は「いつ時点の家族状況で見るか」です。住民税は前年所得をもとに翌年度が決まるため、配偶者や扶養の判定時点も前年の状況が影響します。家族の収入が年の途中で変わった場合は、年末調整や確定申告で整うケースがあるので、慌てずに資料をそろえて確認すると落ち着きます。
| よくある落とし穴 | 起きやすい理由 | 確認の手がかり |
|---|---|---|
| 住民税が対象外だと思わなかった | 所得割がない(非課税・均等割のみ) | 住民税決定通知書の課税区分 |
| 家族分が反映されていない | 会社や申告書に情報が届いていない | 扶養情報、申告書の記載 |
| 控除し切れない | 税額が小さく控除枠が余る | 明細・通知の税額、給付の案内 |
「自分は対象か」を見るときは、税額そのものだけでなく、課税区分や家族情報の届き方もセットで確認すると判断がぶれにくくなります。
ミニQ&A:Q:年の途中で結婚した場合、配偶者分はすぐ増えますか。A:所得税は年末調整や確定申告でその年分を確定させるため、最終的にはそこで整うことが多いです。住民税は翌年度に反映される側面があるので、通知書の年度に注意します。
ミニQ&A:Q:扶養している子が16歳未満でも人数に入りますか。A:税目や手続きで扱いが分かれるため、会社員は申告書類の記載ルールに沿って届け出ることが大切です。迷ったら源泉徴収票や自治体通知の記載を確認します。
- 所得制限は「合計所得金額」で見る
- 家族分は“対象になる家族”と“届出”の両方が重要
- 住民税は所得割があるかどうかで入口が変わる
自分はどう確認する?明細・通知・申告書でのチェック手順
最後に、実際の確認手順です。ここまで読んで「仕組みはわかったけれど、結局どこを見ればいい?」となりがちなので、手元の書類でたどれる形にまとめます。
給与明細で見る:所得税欄の変化と「引ききれない」サイン
会社員は、まず給与明細の所得税欄を見ます。2024年6月以降に所得税の天引きが減っていれば、月次で控除が進んでいる可能性があります。月によって所得税がゼロに近づくこともあり、ここで「あれ、計算が変?」と感じる人が出やすいです。
ただし、月次の控除は“順番に引いていく”仕組みなので、月ごとの変動自体は異常とは限りません。サインとして気にしたいのは、年末になっても控除し切れない見込みがある場合です。そのときは年末調整や確定申告での精算、または給付の対象になるかどうかが関係してきます。
2026年1月時点の最新:定額減税は原則終了、残るのは給付と精算
定額減税は「令和6年分の所得税」と「令和6年度分の住民税(所得割)」に対する特別控除として実施されました。2026年分の所得税や2026年度の住民税で、同じ減税が自動的に続く仕組みではありません。
ただし、控除しきれなかった方の不足額給付や、期限後申告・修正申告による精算は2026年も動く場合があります。自治体からの封書や振込通知が来ていないか、転居した方は手続き先がどこかを一度確認すると安心です。
1) 給与明細(所得税の天引き)
2) 住民税決定通知書(所得割と控除)
3) 年末調整・確定申告(最終精算)
4) 2026年は新規の減税より、給付・精算の確認が中心
見る場所を固定すると、制度の複雑さに振り回されにくくなります。
住民税の通知で見る:特別税額控除の記載と月割りの仕組み
住民税は、自治体から届く住民税決定通知書(会社経由で配布される場合もあります)で確認します。通知書には、所得割の税額や控除の内訳が載り、定額減税が「特別税額控除」などの形で示されることがあります。まずは所得割が課税になっているかを確認します。
次に、月ごとの天引き額を見て、6月・7月以降の月割りがどう組まれているかを確かめます。ここは自治体ごとの表示が少し違うので、数字の並びだけで判断しにくい場合もあります。そのときは、通知書の合計額と12か月分の内訳がつながっているかを見ていくと落ち着きます。
確定申告が必要な人:複数収入や年末調整外のケース
確定申告が関係しやすいのは、個人事業主や副業がある人、年末調整の対象外になっている人です。複数の収入があると、給与だけを見ても全体の所得税額が確定しないため、定額減税が最終的にどう効くかは申告で決まります。
また、年の途中で大きく状況が変わった人も要注意です。例えば、扶養の出入りや転職で源泉徴収が途切れた場合は、月次の控除だけでは整いにくくなります。申告書で2024年分の税額を確定させることで、最終的な控除が形になります。
減税しきれないとき:給付(調整給付)の考え方
税額が小さい人は、控除枠が余って「減税しきれない」ことがあります。この場合は、差額を給付で埋める仕組みが設けられています。つまり、税金から引けなかった分を、別の形で支える発想です。
給付の扱いは自治体の事務にのる部分が大きく、案内や手続きの時期も地域で差が出ます。まずは「所得割が小さい」「そもそも税が少ない」などの事情がある人ほど、自治体からの案内を見逃さないことが大切です。疑問が残るときは、通知書の問い合わせ先を活用すると整理が早くなります。
1) 給与明細(所得税の天引き)
2) 住民税決定通知書(所得割と控除)
3) 年末調整・確定申告(最終精算)
4) 控除し切れない場合は自治体の案内
見る場所を固定すると、制度の複雑さに振り回されにくくなります。
具体例:副業が増えて年末調整だけでは完結しない人は、給与明細で一時的に控除が進んでいても、確定申告で最終税額が確定したあとに「控除の効き方」が落ち着きます。先に明細で一喜一憂せず、最後の精算地点を意識すると安心です。
- 所得税は給与明細、住民税は通知書が基本の確認先
- 複数収入や転職などは確定申告で最終形が見える
- 控除し切れない場合は給付の案内がカギになる
- 年度差(所得税2024年分、住民税2024年度分)を常に意識する
まとめ
定額減税が「いつの所得」にひもづくかは、所得税と住民税で年度の考え方が違うことが原因で混乱しやすいです。所得税は2024年分の税額、住民税は2024年度分の所得割が対象で、住民税側は原則として前年(2023年)の所得情報で判定されます。
会社員は給与明細で所得税の変化を、住民税は自治体の通知書で所得割と控除の記載を確認すると全体像がつかめます。転職や副業、個人事業などで収入が複数に分かれる場合は、年末調整や確定申告で最終的な精算が行われる点も押さえておくと安心です。
迷ったときは、まず「どの税目の話か」を分けて考えるのが近道です。所得税はその年、住民税は前年所得がベースという違いを思い出し、明細・通知・申告書の順に確認してみてください。

